課長がもっと輝けば、日本経済はもっと良くなる:若手のロールモデルに(2/2 ページ)
日本生産性本部が昨年秋に実施した調査によると、新入社員のうち約半数が「管理職になりたくない」と回答。筆者が問題視したのはその理由だ。
一方で、課長の待遇面の相対的な魅力は低減している。厚生労働省の賃金構造基本統計調査で01年以降の課長の賃金動向を見てみると、名目賃金が減っているわけではないものの、会社に入って間もない非役職者(20〜24歳)との賃金格差は縮小している。
具体的には、男性課長の賃金は01年時点で男性非役職者(20〜24歳)の2.57倍であったものが、16年には2.49倍へとやや低下。女性課長の賃金は01年時点で女性非役職者(20〜24歳)の2.34倍であったものが、16年には2.17倍へと大きく低下している。この間、男女共に課長の平均年齢は上がっているにもかかわらずだ(男性:01年 47.3歳→16年 47.7歳、女性:01年 47.6歳→16年 48.8歳)。
つまり、限られたデータからではあるが、課長の業務量は増大する一方で、相対的に見た賃金水準は低下し、かつてに比べて割が悪いポジションになっていることがうかがわれる。
このような状況は日本経済にとって望ましくない。現在、わが国ではこれまでになく「生産性の向上」が求められている。人手不足という経済成長の制約を打破するため、また働き方改革を進めるためにも生産性の向上が欠かせないためだ。この際、現場の生産性向上の推進役であるはずの課長の業務がひっ迫していれば、生産性向上に向けた取組みにまで手がまわらなくなる恐れがある。
また、成長余地の大きい若手社員が能力・スキルを伸長させる上で、「課長になる」という一つの重要なインセンティブを持てなくなり、若手の生産性向上が停滞してしまう可能性もある。
逆に言えば、課長の労働環境や処遇が改善することで、現場の生産性向上が推進されるとともに、課長が若手社員のロールモデル(目指すべき理想像)となれば、日本全体の生産性向上を通じた経済成長への寄与が期待できる。
昨今の新卒採用難の中で、初任給引き上げなど若手社員の待遇改善を図る企業が目立つが、課長層に対しても、これまで以上の目配りとサポートが必要なのではないだろうか。
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