Uberのセクハラ騒動が、私たちに教えてくれたこと:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
世界的なIT企業が集まるカリフォルニア州のシリコンバレーがざわついている。「セクハラ問題」だ。騒動の発端は……。
シリコンバレー騒動から学ぶべきこと
とにかく今シリコンバレーでは、ITビジネスそのものだけでなく、男女差別の問題も企業倫理としてかなり重要視されるようになりつつある。ご存じの通り、その波は日本にも到達している。
日本でもセクハラに関する話題は事欠かない。最近も、岐阜県の女性高校教諭にキスなどのセクハラ行為をしたとした県教委教育研修課の男性が停職処分になったり、近畿大学ボクシング部の監督が女子選手にセクハラをして除名になったり、経済誌で「セクハラにならない誘い方」といった記事が掲載されたり。企業でも、異性の容姿や服装などへのコメントをはじめ、下手すれば視線すら「セクハラ!」と言われる時代だ。
体を触る行為などは問題外だが、セクハラ発言についてもヘイトスピーチや差別用語などと同等の感覚でいないと、会社で評判を落としかねない。すでに会社でも、どこからがセクハラになるかなど男性たちはこれまで以上に気を使うようになっている。なるべく地雷を踏まないよう、慎重に異性と会話している人も多いだろう。
ただ日本の場合は、文化的な違いもあって、おそらく米国をはじめとする欧米よりもセクハラに対して敏感だと感じている。一例は、欧米人ならビジネスシーンでも握手やハグをすることがあるが、日本ならセクハラになるかもしれない。最近トランプ大統領が、フランスのエマニュエル・マクロン大統領の妻の体を見て、「You're in such good shape(すばらしくお元気そうですね)」と言ったことでフェミニストたちから「セクハラ!」と指摘されて話題になったが、トランプが女性についてコメントすることへの嫌悪感や気持ち悪さは別にして、米国なら企業でもそうした発言はよく見られる。
日本もシリコンバレーも、企業文化の奥深くに、まだまだ男性優位の感覚が残っているという点で共通している。だからこそセクハラのニュースはなくならないし、罪の意識なくセクハラ発言をしてしまうオジさんたちも後を絶たない。シリコンバレーの騒動は、それではまかり通らない時代にいることを改めて学ぶいい機会かもしれない。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。
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