トヨタとマツダが模索する新時代:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/3 ページ)
トヨタとマツダが8月4日夜に緊急会見を開いた。その内容は両社が極めて深い領域での資本業務提携を行うもので、正直なところ筆者の予想を上回るものだった。
小飼社長: 私たちマツダは、2020年に創立100周年を迎えます。その先の将来を考えると、豊田社長のおっしゃるように、私たち自動車会社だけで将来を作れるものではなく、新しいプレイヤーと競い合い、協力し合いながら、その先のモビリティ社会を作っていくとの視点はまったくその通りであると考えております。一方、自動車会社はとことんクルマにこだわり続けるべきとの思いは、将来の自動車業界におけるいかなる変化があろうとも取り組まねばならないことであると、自動車会社だからこそ実現できるこだわりと確信しています。
そしてそのクルマ作りにこだわる情熱はマツダは誰にも負けないと自負しております。トヨタさんのグローバルビジョンや豊田社長のメッセージから、規模や領域の幅広さは違えども、私たちには多くの共通点があると感じています。例えば、それぞれのビジョンの中には、「モビリティを通じて人々に感動を与え、社会や地球に貢献していく。そのために自らが挑戦し、改善改革を続けていく趣旨」が含まれています。
われわれマツダは自動車業界を取り巻く新たなプレイヤーとも競争、協調しながら、常に技術とプロセスの学習に取り組み、挑戦し続ける企業でありたいと思っています。2030年、2050年に向け、走る歓びを先鋭化させたクルマ作りと、マツダらしいブランド価値経営により、小さくともより際立つ独自のブランドを築き上げていきます。そしてこの実行こそが長期にわたる両社の協業に貢献できると考えています。
負け嫌い同士が集まり、相互に刺激を与えながら、人材やリーダーを育て、イノベーションをリードしていきたいと思います。そして2年前の会見で豊田社長がお話をされた、「次の100年もクルマは楽しい」とのメッセージを世界に発信することによって、自動車業界の活性化やクルマファンの増加に寄与することができれば、こんなに素晴らしいことは無いと思っています。今後とも皆さまからのご理解、ご支援をいただければと思います。本日は遅い時間、また、急なご案内にも関わらず、多くの方々に共同記者会見にご出席を賜り、誠にありがとうございました。
トヨタもマツダも「負け嫌い」は徹底している。同化して依存し合う関係ではなく、自社ブランドに相応しい未来のモビリティを生み出していくための同志として歩もうとする姿勢がよく分かる。豊田社長が質疑応答で行った発言「今回の提携は自主独立性を尊重し、お互いに切磋琢磨しながら、両社が持続性を持って協力関係を構築することを目指したものであります」という言葉でもそれは明らかである。
これまで群雄割拠でしのぎを削ってきた自動車メーカー同士が、これからは可能な部分では手を携えることになる。そしてそれは自動車メーカー間だけでなく、モビリティ社会の実現に参画するあらゆるプレイヤーと協力しながら、かつそれぞれのブランドの独自性を磨いていくことになるはずだ。少々大げさに言えば、それは資本主義における企業のあり方の新しい形と言えるのかもしれない。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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