レシピ本「歴メシ!」を重版に導いたのは「FGO」だった:著者も担当編集者も“想定外”(3/3 ページ)
世界の歴史料理を再現するレシピ本「歴メシ!」が、著者も担当編集者も予想をしていなかった売れ方をしている。「想定外の重版の大きな原因になったのは、スマートフォン向けゲーム『Fate/Grand Order』のユーザーでした」――そう語る担当編集者に話を聞いた。
「歴メシ!」は「食の特異点」に飛べる本
――ちなみに、竹田さんは「FGO」をプレイし始めたりはしないのでしょうか。
「歴メシ!」を読んでくれた「FGO」プレイヤーのみなさんの感想ツイートを読んでいたら、どんどん興味が出てきました。「歴メシ!」購入者の動機やよかったポイントを知らずして、さらに売り伸ばすことはできません。本屋に並んでいた「マンガで分かる!FGO」というマンガも読んでみたんですがよく分からなくて……やはりプレイするしかないだろうと決意し、つい先日始めてみました。
――おお! 実は私も「FGO」プレイヤーなのですが、ゲームの感想をお聞きしたいです。
どんどんキャラが好きになるように作られているゲームですね。史実を踏まえながらも、「IF」を描くような遊びがあって、ストーリーを追えば追うほどキャラクターを知りたくなる。「この魅力的な偉人たちは、当時どんなものを食べていたんだろう?」という興味が湧いてくるし、「彼らの食に関するエピソードを知りたい」「同じ食事を食べてみたい」と思って「歴メシ!」に手を伸ばしてくれるのだろうなと感じました。実際「あのキャラの食事を作ってみた」という写真をSNSに投稿している読者もいます。
――ストーリーはどうでしょうか?
最も面白いと感じたのは、「特異点」という設定ですね。「FGO」のストーリーは、人類が発展してきた上で重要な時代に異変が起き、本来ならありえない「特異点」になってしまったために、それぞれの時代にタイムトリップ(レイシフト)して解決していくというもの。この特異点という考え方は、食の歴史と非常に親和性が高いなと。
欧米の食の歴史をたどっていくと、明らかに大きな変化が起こる時があります。例えば「歴メシ!」で取り上げているフランス革命は、フランスの食生活を大きく変えました。それまでフランスの飲食店は「ギルド制」を敷いていて、A店では酒だけ、B店では肉だけ……など、特定の食べ物しか出せませんでした。ところが革命によってギルド制が崩れたので、いろいろなものを提供することができるようになりました。さらに貴族に仕えていた宮廷料理人が亡命するか下野するかを迫られ、下野した料理人によってレストラン文化が花開いたのです。これはいわば「食の特異点」ですよね。
――なるほど。「FGO」での「人類に大きな影響を与えた時代」と、「歴メシ!」での「食文化に大きな変化があった時代」が似ているということですね。
食文化というものは、外部との接触か内部での大きな変化によって大きく変わります。そういう大きなうねりがある時代には、有名な偉人や個性豊かなストーリーが生まれやすい。「この時代の偉人たちは、こういう料理を食べて英気を養っていたんだな」と想像を膨らませながら、「歴メシ!」を読んで“食の特異点にレイシフト”していただきたいです。
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