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中高生をターゲットにした映画『ずっと前から好きでした。』はなぜヒットしたのか(1/4 ページ)

4月23日から公開している映画『ずっと前から好きでした。〜告白実行委員会〜』は、中高生に人気のクリエイターHoneyWorksの楽曲をアニメ映画にしたもの。“中高生に届ける”ことに特化して考えられた本作をヒットさせるために何を意識したのか。アニプレックスの宣伝プロデューサー相川和也さんに聞いた。

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 大人はみんな知らないけれど、女子中高生は熱狂している――そんなアニメ映画作品『ずっと前から好きでした。〜告白実行委員会〜』(以下『ずっ好き』)が4月23日から劇場公開中だ。好きな人に思いを伝えられない悩みを抱えた高校生男女のピュアな青春恋愛もので、テイストとしては少女漫画に近い。

 筆者(25歳女性)が本作を鑑賞した際は、四方八方を中高生に囲まれ、約60分の上映時間中ずっと中高生のすすり泣きや感嘆の息に包まれる……といった状態だった。その一方で、同年代や年上世代には作品の存在自体ほとんど知られていない。


公開中の映画『ずっと前から好きでした。〜告白実行委員会〜』ヒットの秘密は?(c)HoneyWorksMovie

 映画といえば、「30〜40代の男性向けに」「アラフォー女性向けに」といったように、ターゲットを幅広く設定する作品が多い。しかし本作は、一般的に「お金を持っていない」といわれる中高生層にターゲットを絞っている。

 にもかかわらず、公開2日間で動員5万人、興行収入7050万円を記録。初週の興行成績は動員・興行収入ともに8位にランクインした。次回作の制作も決定している。

 なぜ『ずっ好き』はヒットしたのか――? アニプレックスの企画制作グループ宣伝部で、本作の宣伝プロデューサーを務めた相川和也さんに、企画の経緯や成功の理由を聞いた。

大人には響かなくても、中高生は熱狂する「HoneyWorks」

 映画『ずっ好き』の原作は、ニコニコ動画出身のクリエイターHoneyWorks(通称「ハニワ」)の“音楽”。HoneyWorksは2012年ごろから活動を始め、2014年1月にはメジャーデビューしている。ボーカロイドに自作のポップミュージックを歌わせ、数多くの曲が再生回数が100万回を超えている。主なファン層は恋愛に関心のある女子中高生だ。

 『ずっ好き』はそうしたHoneyWorksの楽曲の中でも人気の高い「告白実行委員会〜恋愛シリーズ〜」をベースに作られている。

 楽曲をもとに映画を作る――という一風変わったチャレンジングな企画。どこから出発したのだろう。

 「HoneyWorksのCDは、ソニー・ミュージックグループのミュージックレインから発売されている。もともとHoneyWorksはソニー・ミュージックのアーティストの中でも飛び抜けて動画の再生数が多いが、より『ハニワ』を大きなプロジェクトにしてコンテンツ力をもう1つ上にあげていきたいという思いがあった」(相川さん)

映画内でも“本人出演”するHoneyWorks(c)HoneyWorksMovie

 その手段としての漫画や小説のメディアミックス、そして映画――。映画はソニー・ミュージックグループのアニメ事業を担うアニプレックスで企画が立ち上がった。制作プロデューサーとなった斎藤俊輔さんから、相川さんに「宣伝プロデューサーをやらないか」と相談があった。


アニプレックス宣伝プロデューサー相川和也さん

 相川さん自身、HoneyWorksの存在は知っていたが、曲を聴いたことはなかった。宣伝担当になることが決まってから初めて聴き、衝撃を受けたのだという。

 「こんなにまっすぐで青春っぽい音楽は珍しい。中高生がハマるのはすごくよく分かる。高校生にとっては“自分たちのイマ”であるし、小学校高学年から中学生にとっては、“こういった恋愛をしてみたい!”という憧れの恋愛像が描かれている」

 事実、HoneyWorksの動画に付いているコメントは、「今日、あの子に告白した」「好きなのに素直になれない……」といった“恋バナ”や、登場人物たちに対する共感やエールが溢れている。中高生にとって、HoneyWorksの曲の中の恋愛は“リアル”なのだ。

 しかしその一方、相川さんは「中高生に届く一方で、大人に響かせるのが難しい。ターゲットがすごく絞られると思った」と話す。

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