ランドセルがじわじわと値上がりしている理由:新連載・繁盛店から読み解くマーケティングトレンド(1/4 ページ)
平均単価は約5万円、中には15万円を超えるランドセルも。数年前から小学生向けランドセルの高価格化が進んでいます。そしてまた、値段が高くても売れているのです。その背景にはどのような消費トレンドがあるのでしょうか。
新入学のランドセル商戦に異変が起きたのは2015年5月。ちょうど1年前のことです。
大型店舗でのランドセルの新商品がゴールデンウィーク(GW)を前にほぼ出そろったのです。消費トレンド分析を専門とする私の元へいくつかのテレビ局が取材に来ました。
「なぜ少子化の時代にランドセルがこんなに注目されているのですか?」
ランドセル市場は確かにこの数年、盛り上がりを見せている市場の1つです。船井総合研究所の推計によると、2010年には350億円程度の規模だったのが、2016年現在は600億円にまで拡大しています。一方で、職人さんが手作りで作る商品もいまだに多い、古くてアナログで昭和の香りがするのも事実です。
この市場がなぜ今、注目されているのか。2012年のオープン以降、ランドセルの販売個数を20倍以上に伸ばし、今や「ランドセルを買うならココ!」とまで言われるほど全国から注目を集める専門店「ふくふくらんど」(石川県白山市:福住裕社長)で発見したファッズ(小さな変化の波)から、その理由をひも解きます。
年々高くなるランドセル
最近、百貨店やショッピングセンターなどでGWによく見られるようになった光景があります。それは、翌年の小学校入学を控えた家族による「ランドセル選び」です。
前述のふくふくらんどにもGWになると数多くの家族客が来店します。しかし、GWにランドセル選びで来客があるようになったのはこの3年ほどです。それまではそんな光景は見られませんでした。
以前は、ランドセル選びのスタートは、夏のお盆休みを控えた8月に入ってからというのが常識でした。それが3年前のGW中に「ランドセル見ることができますか?」というお客さんが現れたのです。
当時は「見ることは可能ですがまだ商品が入っていないので」と言っていたのですが、2014年からは新商品も入荷するようになり、本気の下見をするお客さんが増えてきました。そして2015年からは「下見ではなくマジ買い」のお客さんもかなり増えてきたのです。
船井総研の計算では、2015年度の全国のランドセル平均単価は4万8000円です。2年前の1.5倍ほどになっています。2016年度は5万円を超えると予想されます。
しかし、個々の販売商品や百貨店の販売価格を見るとさらに高いのが現実です。
読売新聞の静岡支局調べでは、静岡の某百貨店のランドセル平均単価は6万4000円。東京の高島屋百貨店では7万2000円です。また、ランドセルの“高級化”に関して言えば、今やイオンは15万1200円、そごう・西武では12万9600円のランドセルを発売するなど、各社のランドセルは10万円超えが乱立しているという状況です。
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