豪華観光列車の成功に「青春18きっぷ」が必要な理由:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/4 ページ)
旅行業、レジャー産業の価値観を理解すると、鉄道会社の若者への取り組みの重要度が理解できる。時間消費型の若者が成功して資金消費型、富裕層になる。そのとき、彼らの遊びの選択肢に列車旅の記憶がある。そこが重要だ。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP。
シニア向けフリーきっぷが登場
JR東日本は2月18日、同社のシニア向け会員組織「大人の休日倶楽部」会員向けに3種類のフリーきっぷを発表した。「大人の休日倶楽部パス」「北海道新幹線開業記念 大人の休日パス」「大人の休日倶楽部会員限定 北陸フリーきっぷ」だ。
大人の休日倶楽部パスは毎年販売している会員向けフリーきっぷである。2016年度版は6月23日〜7月5日、11月24日〜12月6日、1月19日〜1月31日の3期間が設定された。JR東日本版が連続4日有効で1万5000円、JR北海道版が連続5日有効で1万6250円、JR東日本とJR北海道の両域版が連続5日有効で2万6000円。
北海道新幹線開業記念 大人の休日パスは、8月29日〜9月7日のうち5日間、JR東日本とJR北海道が乗り放題で、両者管内の新幹線も乗車可能。また、青い森鉄道線などの並行在来線第3セクターや富士急行、伊豆急行も利用できる。指定席も6回まで使える。価格は2万6000円。
大人の休日倶楽部会員限定 北陸フリーきっぷは、5期間で設定された。繁忙期間を避けた形で、首都圏からの北陸新幹線往復と第3セクターを含む北陸エリアのフリーエリアを組み合わせた。東京都区内駅発で2万2000円。
どれも魅力的なフリーきっぷで、若い“乗り鉄”にとって「早く歳を取って会員になりたい」と思わせる内容だ。
JRグループは国鉄時代から共通のシニア向け会員割引サービス「ジパング倶楽部」を展開している。ジパング倶楽部はJRの片道201キロメートル以上の利用で最大3割引になる。JR東日本とJR北海道の大人の休日倶楽部はその上位版という位置付けだ。
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