豪華観光列車の成功に「青春18きっぷ」が必要な理由:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)
旅行業、レジャー産業の価値観を理解すると、鉄道会社の若者への取り組みの重要度が理解できる。時間消費型の若者が成功して資金消費型、富裕層になる。そのとき、彼らの遊びの選択肢に列車旅の記憶がある。そこが重要だ。
JRグループは若者向け商品をあきらめない
大人の休日倶楽部のフリーきっぷについては、ネット上で「年寄りばかりズルい」という風評もあった。しかし、JRグループは若者向けの商品開発も実施していた。
JR北海道は「レールメイト」、JR九州は「ナイスゴーイングカード」という会員組織があった。どちらも若者限定の割引制度だったが、既に終了している。JR四国は「ヤング ウィークエンド カード」をまだ実施しているけれど、今年3月31日で新規入会と継続申し込みを終了する。
これらはジパング倶楽部の若者版と言える。JR北海道のレールメイトは、特急利用の都市間割引きっぷをさらに5%引きとした。JR九州のナイスゴーイングカードはJR九州内で片道101キロメートル以上の乗車券と、その乗車券で利用する特急券が4割引になる。JR四国のヤング ウィークエンド カードは、JR四国内で片道61キロメートル以上の往復運賃と特急料金が4割引になる。かなり手厚い優遇だった。
しかし、年間旅行回数が少ない若者に対して、会員制という仕組みが馴染まなかったかもしれない。JR四国はヤング ウィークエンド カードの終了の理由を会員数の低下だという。
それでもJRグループは若者向け商品をあきらめない。全年齢対象とはいえ、破格の「青春18きっぷ」が存続している。若者の利用を前提としたきっぷだ。さらに、JR九州は「ガチきっぷ」と称して、18〜24歳限定で特急に乗れる都市間割引きっぷを期間限定で販売している。
JR四国は新しく3月1日〜4月12日のうち連続3日有効の「若者限定四国フリーきっぷ」を販売する。満25歳以下限定で、特急自由席も利用できて9800円。JR四国は同じく特急自由席を利用でき、全年齢対象で通年販売の「四国フリーきっぷ」を1万6140円で売っている。若者限定四国フリーきっぷは、期間限定とはいえ、6000円以上も割り引く大サービスだ。
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