ランドセルがじわじわと値上がりしている理由:新連載・繁盛店から読み解くマーケティングトレンド(2/4 ページ)
平均単価は約5万円、中には15万円を超えるランドセルも。数年前から小学生向けランドセルの高価格化が進んでいます。そしてまた、値段が高くても売れているのです。その背景にはどのような消費トレンドがあるのでしょうか。
毎年のようにじわじわと価格が上がり続けている背景には、革など素材原価の高騰とともに、ランドセルに対するニーズが多様化し、毎年少しずつ素材やデザインにこだわるお客さんが増えてきたことが理由です。
例えば、デザインについては、背板の色を変えたい、内張りの柄を変えたい、素材をもう少し良い革にしたい、自分の名前を彫りたいなどと、年々顧客からの要望が多くなっています。それらの注文をすべて受け付けて作ると、それは「完全オリジナルのカスタムランドセル」になるわけです。しかも国産のランドセルであれば、基本的に職人が1個ずつ手作りしています。当然のように、必要な部材、工程、作業日数がかかり、結果的に高価格になるというわけです。
こうしたランドセルに対する顧客のこだわりは、20年ほど前から表れ始めました。主に赤と黒のランドセルしかなかった世代は、恐らく40代以上の人たちでしょう。実際には1990年代からさまざまな色が展開されていました。
2000年代になって色の種類が増え、2010年を分岐点にさらに色やデザインのバリエーションが広がりました。ちょうどこのころから小学校ではB5ファイルからA4ファイルを使用するところが増え始め、従来のランドセルではファイルが入れにくくなったことで、少しサイズの大きいランドセルが登場しました。このサイズ対応に併せて2010年以降、再び色やデザインのパターンが増え続けているのです。
このような時代の流れに沿うように、顧客のこだわりも強くなっています。それがランドセルの高価格化を推し進める要因と言えるでしょう。
ただし、いくらランドセルが高くなったからといって、顧客に売れなければ本末転倒なわけです。なぜ高価格でも飛ぶように売れているのでしょうか。その大きな理由は「孫消費」です。
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