組織を引っ張るためには「夢を語るしかない」:夏目幸明の「経営者伝」(1/4 ページ)
自ら事業を立ち上げ、会社を成長させていく起業家たち。彼らはどのように困難を乗り越え、成功を手にしたのか。前回に引き続き、経済ジャーナリストの夏目幸明氏がマクロミルの創業者、杉本哲哉氏のエピソードをお伝えする。
ネットリサーチの国内最大手、マクロミルを創業した杉本哲哉氏(現在はキュレーションアプリ「antenna*」を運営するグライダーアソシエイツの社長を務める)。マクロミルは、時間とコストが掛かっていた既存のマーケティングリサーチをIT化によって変革し、圧倒的に早くて、安いリサーチサービスを実現。創業からわずか5年で同社を東証1部上場へと導いた。
前回は、「創業のきっかけ」を中心にお伝えした。今回は「上場」と「マネジメント」にまつわるエピソードをお伝えする。
「資本家になりたかった」
グライダーアソシエイツの本社は六本木ヒルズにある。入口左手には旅客機の実物大の胴体が置かれ、内側は会議室になっている。眺望は「超ゴージャス」と言っていい。
そんなオフィスで、杉本氏が学生時代を振り返る。大学生だった頃の彼は東京の風呂なし貧乏アパートに住んでいた。そこでこんな夢を描いていたという。
「お金持ちになりたかったわけじゃないけど、資本家にはなりたかったんです。大学の卒業旅行でドイツを訪ねたとき、飲み屋で貴族の青年と意気投合しました。彼は豪邸に住み、既にいくつもの会社を経営しており、ヘリコプターで移動するような生活をしていました」
その青年の話は面白く、杉本氏は思わず引き込まれた。
「このときに、もしお金に頭を下げずに生きていけたら自分なら何をするだろうと思ったんです」
だが、人間はメシを食わねばならないし、事業を始めるなら資本金がいる。故にお金は必要だ。だから杉本は考えた。資本家になろうと。
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