マクロミル創業者が再び起業した理由:夏目幸明の「経営者伝」(3/3 ページ)
自ら事業を立ち上げ、会社を成長させていく起業家たち。経済ジャーナリストの夏目幸明氏がマクロミルの創業者、杉本哲哉氏の創業エピソードをお伝えする。杉本氏が再び起業し、「antenna*(アンテナ)」を立ち上げることになった背景とは。
杉本氏は楽しく悩み続けていた
こうして再び起業した杉本氏は、アンテナをより「立ち読み」に近い感覚で使えるようにユーザーインタフェースを改良するなど、アプリを進化させることに必死になっていた。
その結果、アプリは既に650万ユーザーを突破。既に多くのクライアントが注目するメディアに育っている。杉本はやはり、根っからの実力ある起業家なのだろう。
そして、こんな背中を見せながら人材を育て、新たな文化を育んでいくことが、杉本氏にとっては本当に楽しいのだろう。
杉本氏は話を続ける。
「出版社は、ITといまだに距離があるので、せっかく検索しても良い記事が埋もれていることも多いんです。しかも出版社は、読者が一番読みたい記事はなかなかネットに提供しません。『この記事は人気があるので、読みたければ本を買ってくださいね』という戦略なのです。これでは、ユーザーがなかなかお目当ての記事には出会えません。だから――」
そう、彼は今日も楽しく悩み続けていた。
杉本哲哉(すぎもと・てつや)
1967年生まれ。神奈川県横浜市出身。早稲田大学社会科学部卒業後、リクルートへ入社。00年にネットを活用した市場調査を行うマクロミルを創業し、代表取締役社長に就任。04年東証マザーズ、05年東証一部へ上場。グループ社員数1700人、世界13カ国34拠点で展開。現在社長を務めるグライダーアソシエイツは、12年の設立。運営しているキュレーションアプリ「antenna*(アンテナ)」は現在、ユーザー数約650万人、提携メディア数約300、クライアント数約1500社。
著者プロフィール
夏目幸明(なつめ・ゆきあき)
1972年、愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、広告代理店入社。退職後、経済ジャーナリストに。現在は業務提携コンサルタントとして異業種の企業を結びつけ、新商品/新サービスの開発も行う。著書は『掟破りの成功法則』(PHP研究所)、『ニッポン「もの物語」』(講談社)など多数。
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