なぜマスゴミの「ブーメラン報道」が目立ってきているのか:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
マスコミの「ブーメラン報道」が目立ってきている。最低賃金の問題について、中日新聞は政府が掲げる「時給1000円」を目指すべきと主張したものの、自社のデスク補助業務の学生アルバイトを「時給910円」で募集していることが判明。なぜこのような報道が起きるかというと……。
さまざまな国で「メディア不信」の動きが出てきている理由
実はジャーナリストとは、「カンピューター」で批判や評論をしている、ととらえると、なぜさまざまな国で「メディア不信」の動きが出てきているのかという理由も見えてくる。
これまでジャーナリストはテレビ、新聞、ラジオという情報のインフラを独占していたので、少しくらい乱暴な話を触れ回っても、一般人は「偉いジャーナリストが言っているんだから、そういうものか」となんとなく納得してきた。しかし、ネットやSNSがこれだけ普及してきたことで、それが通用しなくなってきたのだ。
個人が情報を調べることも、情報を発信することもハードルがかなり下がってきたことで、ジャーナリストの勘に基づく強引な主張、主観に満ちた批評などを検証することができる。過去の言動やバックグラウンドまで調べ上げることができるので、「他人に厳しく自分に甘い」なんてのもすぐにバレる。
つまり、読者や視聴者がネットで「裏取り」できるようになったことで、ジャーナリストたちの「カンピューター報道」の粗が「悪目立ち」するようになってしまったのだ。
そんな話こそ、お前の勘に基づく妄想だという罵声がいたるところから飛んできそうだが、大手マスコミが自分たちの言説に対して、一般人になるべく「裏取り」をしてもらいたくないと考えているのは、テレビ業界が「放送アーカイブ施設」をつくることに強く反対をしていることからも明白である。
放送アーカイブ施設とは、これまで放送されたテレビ・ラジオ番組を全て録画・録音して保存して視聴できるような施設で、一部の国会議員から国立国会図書館のなかに放送アーカイブをつくるべきだという、構想がもちあがっているが、テレビ業界が獣医学部新設に反対する日本獣医師会のように反対をしている。
その理由としては著作権の問題で手続き面や費用面が大変だとか、過去のニュース映像に映っている人の人権やプライバシーなどが挙げられているが、なによりも「共謀罪」やら特定秘密保護法の際に耳にタコができるほど聞かされた例のアレが錦の御旗とされている。
『放送局側がもっとも警戒しているのは、「番組の事後検閲につながるのではないか」ということだ。放送事業は総務省からの免許事業。民放連の青木隆典事務局長は「何人(なんぴと)からも干渉を受けないというところが守れないと、言論・表現の自由はあり得ない」と話す』(毎日新聞 2015年7月20日)
「そうだ! そんな危険な施設をつくったらヒトラー安倍の思うように報道がコントロールされてしまう」とシュプレヒコールをする方も少なくないが、冷静に考えると、これもおかしな話だ。
関連記事
- 日本人が「通勤地獄」から抜け出せない、歴史的な背景
暑くなってきたので「満員電車」が辛くなってきた。「働き方改革を実現しよー」「時差出勤をしよー」と叫ばれているのに、なぜ“通勤地獄”は解消されないのか。その歴史をひも解いてみると、意外な事実が……。 - なぜ日本のおじさんは怒ると「責任者を呼べ!」と騒ぐのか
街中を歩いていて、おじさんが「責任者を出せ!」と騒いでいるのを聞いたことはないだろうか。例えば、駅員に大声を出したり、コンビニの店員を叱ったり、とにかく日本のおじさんはよく怒っている。なぜおじさんは「責任者を呼べ!」と叫ぶのか、その背景を調べてみると……。 - 次に、炎上するブラック企業は「マスコミ」だ
「ブラック企業」問題がさまざまな業界で起きているが、いよいよ政治の世界にも広がってきた。豊田議員が秘書に対し、「このハゲー!」と暴言を吐いたことで大きな問題になったわけだが、次のブラック企業はどこか。筆者の窪田氏は「マスコミ」と予想する。その理由は……。 - 「石原さとみの眉が細くなったら日本は危ない」は本当か
女優・石原さとみさんの眉がどんどん細くなっている。彼女のファンからは「そんなのどーでもいいことでしょ」といった声が飛んできそうだが、筆者の窪田さんは「日本経済にとって深刻な事態」という。なぜなら……。 - 「着物業界」が衰退したのはなぜか? 「伝統と書いてボッタクリと読む」世界
訪日観光客の間で「着物」がブームとなっている。売り上げが低迷している着物業界にとっては千載一遇かもしれないが、浮かれていられない「不都合な真実」があるのではないだろうか。それは……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.