ダイナース「ごひいき予約」 有名飲食店のキャンセル席再販:“キャンセル問題”解消目指す
ダイナースクラブカードが会員向けに「ごひいき予約」をスタート。LINEとポケットメニューと提携し、「直前キャンセル」で発生した有名飲食店の空席を買い取り、会員に再版する。飲食業界の「直前キャンセル問題」の解消も目指す。
「ダイナースクラブカード」を発行する三井住友トラストクラブは8月24日、「直前キャンセル」で発生した有名飲食店の空席を買い取り、ダイナースクラブ会員に向けて再販するサービス「ダイナースクラブ ごひいき予約」を開始した。「予約困難な飲食店を“ごひいきさん”のように当日予約できる」ことを会員に向けてアピールするとともに、飲食業界が抱える直前キャンセル問題の解消も目指す。
飲食業界において直前キャンセルや無断キャンセルは、食材や人件費のロス、機会損失といった損害につながる大きな問題になっており、年間推定損失額は飲食業界全体で750億〜2000億円(ダイナースクラブ算出)という。高級店であれば無断キャンセル1件あたりの被害額も大きくなる。有名飲食店の悩みと、富裕層で食に強い関心を持つダイナースクラブ会員の「有名店に行きたい」というニーズをマッチさせたのが「ごひいき予約」だ。
コミュニケーションアプリ「LINE」とポケットメニューが展開する「ポケットコンシェルジュ」を活用する。直前キャンセルで発生した飲食店の空席をダイナースクラブが買い取り、ダイナースクラブのLINE公式アカウントを使って会員にリアルタイムに告知。会員はポケットコンシェルジュを通じて予約と決済を行える。
飲食店にとってはキャンセルによるロスがなくなり、会員にとっては常日頃予約が埋まっている人気店に行けるメリットがあるという。再販が成立しないケースも、ダイナースクラブが買い取りを行っているため、飲食店にとっては損失が小さくなる。
狙うのは会員サービスの充実だ。「ダイナースクラブは現在『エグゼクティブダイニング』という全国約500の高級料亭やレストランに『2人で行くと1人分無料』というサービスを展開しており、年間で数万件以上の利用がある。これらの利用からも、会員の食への強いニーズがうかがえる。食をダイナースクラブカードの付加価値にしていきたい」(三井住友トラストクラブの西村智博常務)という。
提携するLINEの田端信太郎上級執行役員は「LINEは今や通信インフラとなっている。インフラの立場から社会問題を解決していきたい。これまでもヤマト運輸と提携し再配達問題の解消に取り組んできたように、ダイナースとの取り組みでLINEの即時性が貢献できることをうれしく思う」と語る。ホテルやヘアサロンなど他業界でのキャンセル問題対策への横展開も見込むという。
サービス開始時の参加店舗は、「セララバアド」「日本料理 龍吟」「KEISUKE MATSUSIMA」など16店。ポケットメニューの戸門慶代表取締役は「1年後に100店舗の参加を目指す。京都や大阪などでも参加店舗を増やしたい」と目標を掲げた。
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