メディアの報道も問題
今回の一件は取材する側のメディアにも一石が投じられる形になった。同じく準々決勝の試合前、数多くの記者に囲まれた渡部君本人はネット上で問題視されている行為について口をつぐんだが、他のチームメートからは「一生懸命プレーした中でああなった。わざとやったわけではない。高校野球ではこういうことはあり得ること。渡部を責めるのはおかしい」などといった声が上がり、一部のメディアでもその模様の詳細が取り上げられていた。
ところが、これもまた瞬く間にバッシング材料となってネットは大炎上。「わざとやってないとしても結果的に蹴っているのは間違いないのに、どうして反省の色が見られないのか」「開き直り過ぎだ」などといった辛らつなコメントが散見できた。
ちなみにこの詳細を掲載していた一部メディアの記事はネット上でアップされてからわずか数時間後に削除された。よほどの反響があったことで関係者に配慮したと見受けられる。
事実関係を報道することはメディアの責務だが、この騒動で疑惑のプレーが生じたのは高校生だっただけに、今回ばかりは「やり過ぎ」の感が否めなかった。"クロ"と断定されたわけでもないのに騒動を大きく報じれば、周囲は面白おかしく妄想を膨らませてどんどんエスカレートしていく。ネット上ではその中に含まれているであろう分別のつかない人たちによって格好の"メシウマ"とされる危険だってある。ひどいことにプライベートまで探ろうとする動きもあるから、やはりネットは一度流れが狂ってしまうと恐ろしい。
そうは言っても高校生たちは基本的に純粋だ。取材で記者たちから質問されれば素直に答える。ただそれこそ騒動発生後、仙台育英の周囲のオトナたちは渡部君を本当に守りたいのであれば、部員にあらかじめ「メディアには今回の問題についてあまり感情的になって話さないように」とレクチャーしておくべきではなかったか。渡部君のベンチスタートよりも、そのほうが重要だったように思えてならない。
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