従業員の満足を妨げる「働き方改革」の矛盾点とは?:取り組む企業は増加中
「働き方改革」を実施する企業は増えているものの、成果につながらないケースもみられる。それはなぜか――デロイト トーマツ コンサルティング調べ。
「働き方改革」に7割を超える企業が取り組んでいることがデロイト トーマツ コンサルティングの調査で分かった。
「既に働き方改革を実施した」が前回調査時(15年)から7ポイント増の10%、「現在推進中」が32ポイント増の63%と、合計73%に上った。「生産性の向上」(87%)、「従業員の心身の健康の向上」(76%)、「従業員満足度の向上」(74%)などが目的として挙がり、業務効率化だけでなく従業員が働きやすい環境づくりを重視する企業も多い。
具体的な施策は、残業時間の制限や有休取得奨励など「長時間労働の是正」の実施率が86%でトップ。業務の統廃合など「業務の見直し」(62%)、「意識改革」(47%)、オフィス環境の整備(40%)などを行う企業も多かった。
一方、「クラウドワーカーなど、社外労働者の有効活用」(7%)、「AI(人工知能)やRPA(ロボットによる業務自動化)の活用」(13%)などの実施率は低かった。
では、一連の施策はどのような成果につながっているのだろうか。調査では「効果が感じられ、従業員の満足も得られた」が28%だった一方、「効果が感じられたが、従業員の満足は得られなかった」(21%)、「効果が感じられず、従業員の満足も得られなかった」(21%)も一定数存在し、施策が有効ではない場合もあることがうかがえた。
働き方改革がうまくいかない要因については「ある程度の長時間労働は仕方ないという雰囲気がある」(59%)「早く仕事を終わらせてもあまり評価に関係しない」(53%)、「『長時間働いている人=頑張っている人』と評価されることが多い」(45%)と企業風土を問題視する声が多かった。
デロイト トーマツ コンサルティングは、「企業で長時間労働の是正が進んでいる一方で、短時間での成果創出や生産性の高い働き方を評価する風土は浸透していない」と矛盾点を指摘している。
調査は6月1日〜7月7日にかけて、上場企業を中心とする238社を対象に実施した。
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