電通の働き方改革はうまくいくのか:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
電通は2017年7月、労働環境改善の基本計画を公表した。19年度までに全体の労働時間を2割削減するというものだが、果たしてうまく機能するのだろうか。
以前からハードワークの会社として知られている大手広告代理店の電通。2015年に起きた新入社員の過労自殺事件を受けて、東京地検が労働基準法違反で同社を起訴しており、17年7月から正式に裁判がスタートした。
同じタイミングで同社は、19年度までに1人当たりの年間総労働時間を2割減らし、現状の2252時間から1800時間に削減する労働環境改善の基本計画を公表した。
この内容について議論する前に、日本の広告ビジネスと電通という企業の特殊性について理解しておく必要がある。
電通は国内の広告市場において圧倒的なシェアを持つガリバー企業だ。ほぼ独占に近い水準までシェアを高めている背景には、太平洋戦争に伴う報道統制が起因している。
政府は当時、報道統制を強化するため「新聞事業令」を施行。全国に100以上あった日刊紙を55紙に統合し、政府の管理下に置いた。同時に新聞社にニュースを配信する通信社も国策通信社である同盟通信に1本化した。
この同盟通信の広告代理店部門が戦後、独立したのが現在の電通だ。日本ほどの経済大国に大手紙がわずか5紙しかなく、多くの広告が電通に集中しているのは、戦争による報道統制の名残りといってよい。
国策通信社への統合は電通自身が望んだことではなかったが、結果的に電通はほぼ独占に近い市場ポジションを得ることができた。これは1種の利権であり、戦後、電通はこの立場を死守するため全力を傾けることになる。
電通にはハードワークの代名詞とも言われる「鬼十則」という行動規範があったが、仕事のためなら全てを犠牲にする独特の社風はこうして出来上がった。
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