電通の働き方改革はうまくいくのか:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
電通は2017年7月、労働環境改善の基本計画を公表した。19年度までに全体の労働時間を2割削減するというものだが、果たしてうまく機能するのだろうか。
「調整」が膨大な労力に
これに加えて、利益相反の概念が薄い日本の社会風土も電通のビジネスに大きく影響している。例えば、米国の広告業界は、広告を出す広告主側の代理人(エージェンシー)と広告を受け入れるメディア側の代理人(メディアレップ)が明確に分かれており、双方が交渉する形で広告の出稿が決まる。
ところが日本では、電通のような企業がエージェンシーとメディアレップを兼ねており、メディアと広告主の仲立ちをする形になっている。
しかし、できるだけ安く出稿したい広告主と、できるだけ高く売りたいメディア側では、そもそも利害が一致しない。しかも、圧倒的なシェアを持つ電通は利害が対立する複数のクライアントを同時に抱え込むことになる。
一連の利害をうまく「調整」するのが日本の広告代理店の役割であり、そのためには膨大な労力が必要とされる。慢性的な長時間労働体質になっているのは、この辺りに根本的な原因がある。
今回の電通の働き方改革については、社内から業務品質の低下を危惧する声があったと言われるが、この業務品質とは広告の質の話ではなく、こうした膨大な調整作業が果たしてうまく機能するのかというニュアンスが強い。
電通の14年度における1人当たりの年間総労働時間は2252時間だった。日本人の平均的な年間総労働時間は約1700時間なので電通社員の労働時間は長い。前述したように基本計画では、19年度までに1800時間にするという目標を掲げている。
具体的な削減方法としては、人員の増強で約100時間、業務の見直しで100時間、自動化やアウトソーシングで100時間、IT活用の推進などで100時間といった配分になっているが、この利害の調整に掛かる時間をどう減らしていくかが重要なポイントになるだろう。
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