「よなよなエール」リニューアルの裏側の“追い風”:クラフトビール市場の盛り上げ目指す
ヤッホーブルーイングが主力ブランド「よなよなエール」をリニューアルする。20年目にして初のリニューアルの背景には何があるのか。
クラフトビール市場の中でトップシェアを誇り、市場をけん引してきたヤッホーブルーイングが、主力商品「よなよなエール」をリニューアルする。1997年の発売から20年目にして、初めての大々的な味のリニューアル敢行だ。
味を改善するプロジェクトは07年から動いていたが、理想を実現するためのノウハウが足りず、海外でビールの作り方を学び直したという。リニューアルレシピの原型は15年に完成し、今年ついに刷新に至った。
リニューアル後のキーメッセージは「あたらしい味で、クラフトビールの真ん中へ」。香りがさらに華やかになり、味の余韻や苦みもやや変化した。
「発売以来追い求めてきた理想の味が実現した。支持を得ている商品の味を変えることには社内でも議論があったが、進化した味をファンやこれまでクラフトビールを飲んだことがない方に届け、市場を広げていきたい。それができるのはクラフトビールのリーダーである我々だと考えている」(以下、ヤッホーブルーイング井手直行社長)
クラフトビール市場に吹く“追い風”
このタイミングでのリニューアルの背景には、市場の成長もある。井手社長はリニューアル発表会で「国内のビール市場は2000年以降縮小しているが、クラフトビールの市場だけは成長し、世の中の関心が高い。追い風も吹いていて、まだまだ面白いことができる」と自信をのぞかせる。
井手社長が“追い風”と呼ぶのは18年4月に迎える酒税法改正だ。ヤッホーブルーイングでは「水曜日のネコ」など一部の製品では現在「発泡酒」のくくりになっているものがあるが、法改正でビールの原材料として扱える材料が拡大するため、種別をビールへと変更できるようになる。「発泡酒と書いてあると敬遠する方はまだまだいる。法改正により、ビールと同じ土俵に立てる」という。
さらに、20年の東京オリンピックに向けた海外観光客の増加、ビールの酒税が将来的に段階的に引き下げられていく見通し、多様で個性的なビールを求める市場のニーズ――などもクラフトビール市場拡大を後押しすると見る。現状はビール市場全体の中で1%ほどとまだまだ小さな市場だというが、「20年には3%に、中長期的には10%くらい成長するポテンシャルがあると思っている」と展望を語る。
クラフトビールが「コンビニの常連」になる日
こうした状況で、「よなよなエール」に経営資源を集中し、ヤッホーブルーイングのビールが「コンビニに置かれること」を目標にするという。ローソンはクラフトビールに力を入れているが、ファミリーマートやセブン-イレブンではまだまだ棚での存在感が少ないのが現状だ。
「ビールのマーケットは縮小しているが、カテゴリーは細分化している。10年前のコンビニには一般的なビールしか並んでいなかったが、今は発泡酒、ノンアルコールビールなどさまざまなカテゴリーのビールが並ぶようになった。それは消費者からの強いニーズがあることを意味している。ヤッホーブルーイングをはじめとするクラフトビールも“必需品”になりたい」
国内の大手ビールメーカーもクラフトビール市場に目を向け、参入を始めている。キリンビールは14年にヤッホーブルーイングと業務・資本提携を結び、クラフトビールを提供する店舗を展開している。「大手の参入で競争は激しくなるが、市場は広がっていくことにつながる。ヤッホーブルーイングは大手ができない取り組みをしていく。キリンとの提携については、お互いにビール市場を盛り上げるスピードを高めていきたい」という。
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