過熱するデジタル人材の獲得競争:乗り遅れるな(2/6 ページ)
世界規模でデジタル人材の獲得が過熱している。本記事では経営コンサルタントとしての視点から、今後どのような視点で企業の採用・育成が行われるべきかについて論じていく。
エンジニアのあり方
かかるエンジニアの類型に関し、後段で採用の仕方に入る前に、どのような場所で働くべきか、どのような人材バランスであるべきかについて議論しておきたい。
ビジネスデザイナーは前述の通り、顧客とビジネスのことを最も理解している必要がある人材である。従って働くべき場所は、自ずから顧客(=市場)となり、日本の市場においては日本人が日本で働くことが最も多いと想定される。
テクニカルデザイナーは、位置付けとしてはビジネスデザイナーとエンジニア・プログラマーのつなぎの役割となる。後述するが、エンジニア・プログラマーはむしろ、より人件費の安い東南アジアなどにオフショア化が進むと想定され、その意味においてはテクニカルデザイナーは両社を結合するリエゾン的な動きをすることが求められる。
エンジニア・プログラマーは今後多様化が進むと考えられる。Webサービスやアプリケーション業界においては、企画から開発、リリース、そしてアップデートまでの時間が劇的に短くなっており、これらに関わるエンジニアは極力上記デザイナーと物理的・心理的にコミュニケーションが取りやすい環境にいることが求められる。結果的に、近傍のエリアで探すか、社内に抱え、インハウス化することとなる。
一方で、企業の業務システムなど、規模が大きく、リリースまでの時間が長いものについては、技術的なキャッチアップが可能かつ、低廉な人件費で雇用できることが望ましく、アウトソース化が進んでいくと思われる。特に東南アジアにおいては、フィリピンやバングラデッシュなど、従来はオフショア先として注目されてこなかった国のIT系の資格保有者が急速に増加しており、今後の地域展開にも目を光らせる必要がある。
かかる職種の人材のバランスであるが、今後求めるべきバランスはビジネスデザイナー:テクニカルデザイナー:エンジニア・プログラマーの比率は2:3:5と想定する。これは恐らく多くの日本のIT企業の人材バランスに比べると、「頭でっかち」に見える。しかしながら前述の通り、上流のビジネスデザイナー、テクニカルデザイナー自体がエンジニアとしての素養・バックグラウンドを持ち、手を動かすことができない企画専門職でないことを考えると、必然的な割合と考えられる。
以降、ビジネスデザイナーとテクニカルデザイナーの2つの職種の人材の確保の方法について、議論することとしたい(前述の通り、エンジニア・プログラマーの採用についても多数の論点があると想定するが、本稿では取り扱わない)。
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