AIは優秀な人材を採用できるのか:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
企業の採用業務にAIを活用する動きが進んでいる。AIが採用後の結果まで自己学習するようになれば、今後は「採用の基準」もAIが作るようになるかもしれない。
ソフトバンクは2017年5月、新卒の採用業務に米IBMの人工知能(AI)「Watson」を導入すると発表した。AI化の対象となるのは、応募者から寄せられたエントリーシートの採点。AIにエントリーシートを読み込ませ、合格点だった場合にはそのまま通過させ、不合格だった場合には、再度、人事担当者が確認した上で合否を判定するという。
AIに関する話題が盛り上がっているところに絶妙のタイミングでリリースされたこともあり、各メディアでは「とうとう採用にまでAIが」といったトーンで取り上げられた。
ただ、今回の取り組みは、そこまで驚くような話ではない。10年以上前の新卒採用活動は、企業側が採用対象となる学生を学校名などで絞っていたので、無数の応募が寄せられるということはなかったが、今日の採用は基本的にオープンに実施するのが原則である。このため、有名企業にはさばき切れないほどのエントリーシートが寄せられることになる。
こうしたエントリーシートの中には、企業が求める水準に全く達しないのものや、ふざけた内容が記述してあるものなどが多数含まれる。企業の採用担当者にしてみれば、能力や意思のある学生とのコミュニケーションに時間を割きたいと考えるのは自然なことであり、こうした不適当なエントリーシートを排除する作業はできるだけ効率化したい。今回のAI導入はあくまでこうした目的で行われるものだ。
一世代前のAIは、自然言語の解析能力が低く、一般的な文書の読解に難があったが、近年のAIは格段に能力が向上している。エントリーシートを読み込ませて分析すれば、内容が支離滅裂であったり、文法が無視されているといった判別は、ごく簡単に実施できる。
もともと機械化に対するニーズが強い業務にAIが導入されただけの話であり、採用の仕組みが根本的に変わるという話ではないのだ。万が一の事態に備え、人が再度、確認するという措置も組み込まれており、大きな問題は発生しないだろう。
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