AIビジネスの“カンブリア爆発”が始まる:2016年の企業動向を振り返る(1/4 ページ)
2015〜2016年にかけて、AI(人工知能)は人間を超える「目」と人間並みの「耳」を持った――。目を持ったことでカンブリア紀に生物が爆発的に増えたように、AI搭載の製品やサービスもこれから爆発的に増えると考えられる。2017年以降、そのAIビジネスをけん引する企業とは……。
2016年を一言で言えば、2017年以降に起こるであろうAIビジネス全盛期の「夜明け前」ということになると思う。
2012年に、ディープラーニングと呼ばれるAIの新技術が、世界中の研究者を驚愕(きょうがく)させてから4年。米Googleなどの先進的企業がディープラーニングを使って、驚くべき成果を出し続けている。
今年最も世間を騒がせたテクノロジー関連ニュースと言えば、Google傘下の英DeepMindがAI「AlphaGo」で韓国の囲碁のチャンピオンを打ち負かしたというニュースだろう。
囲碁はチェスや将棋に比べると碁盤の数が多く、その分、計算量が何乗にも跳ね上がる。これまでAIはチェスのチャンピオンやプロ棋士を順調に打ち負かしてきているが、囲碁のチャンピオンに勝つには少なくともあと10年はかかるというのが専門家たちの支配的な見解だった。それがディープラーニングを使うことで、早くも囲碁のチャンピオンに勝ち、世界が驚いたわけだ。
世間一般的にはこの話が大きなニュースだったのだが、筆者自身は米MicrosoftのAI研究所が今年9月に音声認識で世界新記録を打ち立てたというニュースに衝撃を受けた。
音声認識の精度は、音声認識に失敗したサンプルデータの割合、つまりエラー率で表現されるのだが、Microsoftが6.3%のエラー率を記録した。それだけでも関係者にとっては大きなニュースだったが、翌月の10月にはMicrosoftがエラー率をさらに引き下げて5.9%を達成。このエラー率は、プロの速記者と並ぶほどだという。
当のMicrosoftの研究者にとっても、この進化は驚愕(きょうがく)に値するらしく「5年前に技術がここまで進化するとは想像もできなかった」と語っている。このペースなら2017年には音声認識でAIが人間を超えるのは間違いないだろう。キーボード入力の時代から音声入力の時代へと、大きく移行することになる。
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