AIビジネスの“カンブリア爆発”が始まる:2016年の企業動向を振り返る(2/4 ページ)
2015〜2016年にかけて、AI(人工知能)は人間を超える「目」と人間並みの「耳」を持った――。目を持ったことでカンブリア紀に生物が爆発的に増えたように、AI搭載の製品やサービスもこれから爆発的に増えると考えられる。2017年以降、そのAIビジネスをけん引する企業とは……。
AIは人間を超える「目」と人間並みの「耳」を持った
実は画像認識に関しては、AIは既に2015年に人間の能力を上回っている。顔や交通標識、手書き文字の認識ではAIが人間を既に上回っていたが、「ImageNet」と呼ばれる画像データベースに収納されている、より一般的な写真の認識でも、AIは4.9%のエラー率に抑えた。5年前のAIのエラー率は25%だったことから見ても、技術の進化には目を見張るものがある。
同じデータベースの写真を人間にも見せて何が写っているのかを答えてもらったところ、中には犬や植物の種類など答えがよく分からないものが含まれているため、エラー率は5%だったという。画像認識においてもAIが人間を上回ったわけだ。
AIが、人間を超える性能の「目」と人間並みの「耳」を持ったことになる。目と耳は五感の中でも最も学習に関連する感覚だ。目と耳を持ったAIは、これからいろいろな事象を、ものすごいスピードで学習していくことになるのだろう。
遠い昔、カンブリア紀に生物の種類が爆発的に増えた時期がある。いわゆるカンブリア大爆発という現象だ。なぜこの時期に種が爆発的に増えたのか。諸説あるものの最も有力な説の1つが、生物が目を持ったことで周りの環境に順応しやすくなったからだという説だ。
目を持ったことでカンブリア紀に生物が爆発的に増えたように、AI搭載の製品やサービスもこれから爆発的に増えるのではないかと思う。
事実、ディープラーニングに最適と言われる「GPU」と呼ばれる半導体のメーカー、米NVIDIA(エヌビディア)によると、同社のGPUを採用する企業の数がこの2年間で35倍、3400社以上に膨れ上がったという。同社が把握しているだけでも、その領域は、ヘルスケアやライフサイエンス、エネルギー、金融サービス、自動車、製造、メディア・娯楽、高等教育、ゲーム、行政と、多岐にわたる。
Google、Facebook、Microsoftなどのテクノロジー大手は2012年ごろから動き出し、昨年辺りからAIを搭載した製品、サービスをリリースし始めた。一般的な企業の中でも動きの早い企業は、そのテクノロジー大手の成果を見て、2015年ごろから調査に乗り出し、2016年からは本格的に研究開発を進めている。
そうした企業から、業界勢力図を塗り替えるような製品やサービスが一斉に市場に登場し始めるのが2017年以降になる。21世紀の「カンブリア大爆発」が間もなく始まろうとしているわけだ。
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