AIビジネスの“カンブリア爆発”が始まる:2016年の企業動向を振り返る(3/4 ページ)
2015〜2016年にかけて、AI(人工知能)は人間を超える「目」と人間並みの「耳」を持った――。目を持ったことでカンブリア紀に生物が爆発的に増えたように、AI搭載の製品やサービスもこれから爆発的に増えると考えられる。2017年以降、そのAIビジネスをけん引する企業とは……。
DeepMindとNVIDIAの時代
さて、この21世紀のカンブリア大爆発をけん引しているのが、DeepMindとNVIDIAの2社だ。
DeepMindは、天才の呼び名の高いデミス・ハサビス氏が設立し、2014年にGoogleに買収された新進気鋭のAIベンチャーだ。
同氏は、子供のころはチェスの神童として英国では有名だったようで、チェスの大会で優勝した賞金でPCを買い、独学でプログラミングを学んだ。10代でゲーム開発者としてゲーム会社に参画し、ヒットゲームを次々と生んでいる。20代は、大学と大学院でコンピュータ科学と脳神経科学を専攻。「これで世界的AIビジネスを立ち上げるのに、十分な知識がそろった」と考えた同氏は2010年にDeepMindを創業した。
同社の目標は、知性を解明し、それを世の中のあらゆる問題に応用し解決する、というもの。この目標を達成するには潤沢な資金が必要。そこでGoogleの傘下に入り、潤沢な資金とGoogleのブランド力で、神経科学とAIのトップレベルの研究者を250人以上も雇用している。最近の講演の中で同氏は「世界最大規模のAI研究組織になっている」と胸を張っている。
事実、AlphaGoを含め、今年のAI関連の論文やニュースで、話題になったのは、DeepMindの手によるものがかなり多かったように思う。
さて、もう一方の立役者であるNVIDIAも、このところ何かとニュースになりやすい。新しいところでは年明けに米ラスベガスで開催される世界最大級の家電見本市「CES」の基調講演に、NVIDIAのCEO、ジェン・スン・フアン氏が選ばれた。
CESの基調講演は、もともとは大手家電メーカーのトップが行うことが多かったが、2000年にMicrosoftのビル・ゲイツ氏が、家電業界以外で初の基調講演のスピーカーになった。家電におけるデジタル技術の重要性の高まりを示唆するような人選だった。その後もPC業界のトップが基調講演に招かれることが多かったが、来年は初めてAI向け半導体メーカーのトップが招かれることになった。PCからAIへ。時代の流れを象徴するような人選だ。
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