AIビジネスの“カンブリア爆発”が始まる:2016年の企業動向を振り返る(4/4 ページ)
2015〜2016年にかけて、AI(人工知能)は人間を超える「目」と人間並みの「耳」を持った――。目を持ったことでカンブリア紀に生物が爆発的に増えたように、AI搭載の製品やサービスもこれから爆発的に増えると考えられる。2017年以降、そのAIビジネスをけん引する企業とは……。
21世紀のカンブリア大爆発が始まろうとしている
NVIDIAは、ゲームのグラフィック処理のための半導体であるGPUのメーカーとして台頭してきた。PCの頭脳であるCPUは、命令を順番に実行していくのに対し、GPUは命令を並列に処理する。人間の脳はシナプスとニューロンで形成される回路の上で膨大な数の並列処理を行っていると言われる。そういう意味でAIにはGPUが向いているということもあるようだ(実際にはそれ以外の理由もあるが)。
2012年にGoogleが最初にディープラーニングによる猫の画像の認識実験に成功したときには、2000個のCPUを必要とした。大量のコンピュータを投入できるような潤沢な資金を持つ大企業にしか、ディープラーニングの実験ができなかったわけだ。
ところが同じ実験を、スタンフォード大学のAI研究所がわずか12個のNVIDIA製GPUで再現することに成功した。この成功を受けて世界中のAI研究者が、NVIDIAのGPUに飛びつくことになる。NVIDIAがAIハードウェアのコストを大幅に下げたことが、ディープラーニングの急速な進化を可能にした最大の要因であると言っても、決して過言ではないだろう。
つまりここ数年のAIの進化は、DeepMindが山の頂上を極め、NVIDIAが山の裾野を広げてきたわけだ。
PC時代は、MicrosoftとIntelが時代をけん引し、モバイル時代は、AppleとGoogleが引っ張ってきた。AI時代は、DeepMindとNVIDIAが台頭するかもしれない。
21世紀のカンブリア大爆発が間もなく始まろうとしている。さて、どのような激震をどのような業界に送り込むことになるのだろうか。わくわくするような「夜明け前」だ。
著者プロフィール
湯川鶴章(ゆかわ・つるあき)
ITジャーナリスト。時事通信編集委員を経て独立し、ブログメディアTechWaveを立ち上げたあとフリーに。「少人数勉強会TheWave湯川塾」ビジネスマンのためのAI講座湯川鶴章オンラインサロンなどのセミナーも運営する。
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