AIは優秀な人材を採用できるのか:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
企業の採用業務にAIを活用する動きが進んでいる。AIが採用後の結果まで自己学習するようになれば、今後は「採用の基準」もAIが作るようになるかもしれない。
従来の適性試験と大きな違いはない
企業の採用活動全般にAIが導入されるのは時間の問題といってよい。日用品大手のユニリーバなど、グローバル企業の中にはAIベースの採用を本格化しているところもある。同社では2016年以降、リクルーターなどを使った従来型の採用活動から、AIによる採用にシフトしており、この方法で既に450人以上を採用している。
エントリーシートを読み込んだAIは、必要な条件に合致する応募者を自動で選抜し、この段階で約半数に絞る。ここを通過した応募者は、指定された12個のオンラインゲームに取り組み、集中力や記憶力などが判定される。
その後、ようやく面接となるが、この段階でも直接、顔を合わせたコミュニケーションにはならない。与えられたテーマの回答を動画で送信するという「デジタル面接」が待ち構えているからだ。ここを突破するとようやく、人と直接会っての面接となり、最終的な合格者が選抜される。この取り組みは、同社の日本法人であるユニリーバ・ジャパンでも実施されている。
ユニリーバの取り組みは、採用活動のかなりの部分までAIが支配しているように見える。だが、これも少し冷静になって考えてみれば、従来の採用プロセスと本質的な違いはないことが分かる。
従来の新卒採用においても、リクルートが開発したSPIに代表される、いわゆる適性検査を課すところは多い。SPIは言語を使った論理的思考を問うものと、数学的思考を問うものの2種類で構成されており、受験者の基礎能力の判定に用いられている。
ユニリーバの取り組みも基本的にはこうした方法と大差はない。違いがあるとすれば、会場に受験生が集まり一斉に試験を受けるのか、一連のプロセスがWebで完結しているのかという点だけである。
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