AIは優秀な人材を採用できるのか:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
企業の採用業務にAIを活用する動きが進んでいる。AIが採用後の結果まで自己学習するようになれば、今後は「採用の基準」もAIが作るようになるかもしれない。
採用基準もAIが作る時代に?
ただ、こうした採用活動が普及し、いわゆるビッグデータが蓄積されてくると、状況は再び変化する可能性がある。AIを使って実際に採用された人がどの程度のパフォーマンスを発揮したのか、その成果についてAI自身が学習するようになってくるからだ。
現在の採用活動は、会社が希望する学生の能力や性格について、採用担当者がはっきり認識していることが大前提となっており、AIは業務の効率化を側面的に支援しているに過ぎない。だが、AIが採用後の結果(入社後のパフォーマンス)について自己学習する段階に入ると、採用基準もAIが作れるようになる。
そうなると、従来の基準では想像もしなかった人材をAIが推薦してくる可能性がある。そのとき、AIがなぜその人物を選んだのかについて採用担当者は理解できないかもしれない。しかし、AIは過去のデータから入社後に優秀な成績を残せる可能性の高い人材を導き出しているのだ。
実際、AIを使った囲碁や将棋の世界では、AIがなぜその手を選択したのかエンジニアは理解できていない。また小売店のフロアにおける陳列やスタッフの配置をAIに分析させたケースでも、なぜAIのアドバイス通りにすると売り上げが増加するのか分からないケースがあるという。
現実には、採用担当者によって選抜された候補者と、AIによって選抜された候補者をうまくミックスする方法が選択される可能性が高く、採用そのものが全てAIに代替されるとは考えにくい。だが、AIによる評価の比重が高まってくることは間違いないし、将来的には全てをAIに任せる企業が出てくるかもしれない。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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