「理想像」を追い求める前に、周囲の期待に応えろ:常見陽平のサラリーマン研究所(1/2 ページ)
同世代や、少し上の世代の起業家などに憧れている人もいるだろう。そして、そのギャップに苦しんでしまう人もいるかもしれない。ただ、冷静になってほしい。それはあくまで、あなたが“勝手にイメージしている”できるビジネスパーソン「像」にすぎないのだ。
映画『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』(2017年9月16日公開)が話題になっている。
物語の内容は、ミュージシャンの奥田民生的な“ゆるさ”に憧れる雑誌編集者(主人公)と、アパレル企業の広報によるラブコメディーだ。メインテーマはタイトル通り、「奥田民生みたいな男になりたい」という主人公の思いであり、理想と現実のギャップである。
自分がなりたい理想像と、実際の自分像、さらには周りから見られている自分像とのギャップ。読者もこれに悩んでいないだろうか。まだ仕事が十分にできない新人時代はもちろん、より大きな仕事が任されるようになったり、役職がついたあとも、この悩みは尽きないものだ。
奥田民生になりたいというビジネスパーソンはあまりいないだろう。ただ、それぞれ理想のビジネスパーソン像があるはずだ。(ちょうど良いロールモデルがいないという、平成における長年の課題もあるが)。
それこそ、読者の中には、同世代や少し上の世代の起業家などに憧れている人もいるだろう。そして、そのギャップに苦しんでしまう人もいるかもしれない。
ただ、冷静になって欲しい。それはあくまで、あなたが“勝手にイメージしている”できるビジネスパーソン像にすぎない。私は著名な起業家やビジネスパーソンと会う機会が多いのだが、ぶっちゃけ、幻滅することも多かった。
一見、天才肌のように見えても、周囲が本人の“ダメ”な部分を必死に補うことによって彼らの「イメージ」が成立していたり、仕事のやり過ぎで健康や家庭を壊すような悲惨な人も多く見てきたからだ。
余談ではあるが、これは物書き業界でも同じである。ネットニュースのライターになって11年、書籍の著者デビューをして10年になる。その過程で、売れている著者に会う機会もよくあったが、ほとんどゴーストライターに任せているという人や、本を売れていることにするため、自分の会社の経費で大量に買っている人もいた。
イメージと現実は全然違うという話である。私と会った人もそう感じているかもしれない。ただ、1つ誇れるのは、比較的自然体でも生き残ってきたことだろうか。
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