女性記者の過労死問題で、なぜNHKはウソをついたのか:スピン経済の歩き方(1/6 ページ)
NHKの女性記者が「過労死」していたことが分かった。2013年7月にこの女性は亡くなったわけだが、なぜNHKはこの大きな問題を伏せていたのか。
NHKの女性記者が「過労死」していたことが分かった。
2013年7月、NHK記者として都庁などを担当していた佐戸未和さん(当時31歳)が159時間にものぼる時間外労働を強いられた果てに、うっ血性心不全で亡くなっていたのである。
この少し前の13年5月、NHKはETVの「ハートネットTV」という社会福祉番組で、「ブラック企業に立ち向かえ」という番組を放送していた。ブラック企業問題に取り組むNPO法人「POSSE(ポッセ)」の活動を紹介して、過労死など追い詰められないよう警鐘を鳴らす番組だ。
正義を掲げる「いいもん」が実は裏で糸をひく「わるもん」だった、みたいなドンデン返しは映画やドラマでよくみかけるが、それを地でいっていたのが「みなさまのNHK」だったというわけだ。
ちなみに、POSSEの方も企画委員会に名をつらねている「ブラック企業大賞2013」が、佐戸さんがお亡くなりになった数週間後に決定した。大賞となったのは、ワタミフードサービス。その受賞理由は、08年6月に正社員だった女性(当時26歳)が、『厚生労働省が定める過労死ライン(月80時間の残業)をはるかに上回る月141時間の残業を強いられ、わずか入社2カ月で精神疾患と過労自殺に追い込まれた』(ブラック企業大賞公式Webサイトより)からだという。
残業時間だけで比較できるものではないが、あれだけ世間から叩かれたワタミと並んでも、今回のNHKのブラックぶりは遜色ない。
労災認定を受けた14年5月以降も、「過労死」の事実を伏せていたNHKは当初、「遺族側の要望で公表を控えていた」と説明したが、佐戸さんのお父様は「事実ではない」と否定している。
ご遺族から「公にしないで欲しい」という要望がなかったとしたら、なぜNHKは佐戸さんの「過労死」を速やかに公表しなかったのか。
関連記事
- 無資格検査 日産の社長が「謝罪」をしない理由
無資格の従業員に「完成検査」をさせていたことが判明した日産自動車が、38車種116万台のリコールの届け出をした。多くのメディアがこの問題を報じているが、筆者の窪田順生氏は同社の「危機管理対応」に注目しているという。どういうことかというと……。 - 日本人が「通勤地獄」から抜け出せない、歴史的な背景
暑くなってきたので「満員電車」が辛くなってきた。「働き方改革を実現しよー」「時差出勤をしよー」と叫ばれているのに、なぜ“通勤地獄”は解消されないのか。その歴史をひも解いてみると、意外な事実が……。 - なぜ日本のおじさんは怒ると「責任者を呼べ!」と騒ぐのか
街中を歩いていて、おじさんが「責任者を出せ!」と騒いでいるのを聞いたことはないだろうか。例えば、駅員に大声を出したり、コンビニの店員を叱ったり、とにかく日本のおじさんはよく怒っている。なぜおじさんは「責任者を呼べ!」と叫ぶのか、その背景を調べてみると……。 - 「ウィルキンソン」がバカ売れしている本当の理由
「ウィルキンソン」が売れている。躍進のきっかけはハイボールブーム。割り材としての需要が増えたことでブランド認知が上がったそうだが、大事な要素が欠けているのではないだろうか。どういうことかというと……。 - なぜ小池百合子は「仲間」との写真撮影に「3万円」を徴収したのか
「希望の党」を立ち上げた小池百合子さんが、党公認候補予定者らとツーショットの写真撮影をして、そこで「3万円」を徴収した。「選挙資金がないからと言って、お金に汚すぎる」と思われたかもしれないが、小池さんの狙いは別のところにあるのではないか。それは……。 - 「最近の政治家は“質”が落ちている」というのは大ウソだ
政治家の不祥事が続いている。パワハラ議員がいたり、サッカーファンをののしる議員がいたり。このほかにもダメ政治家が世間をにぎわせているが、最近の政治家は本当に質が落ちているのか。いや、そうではなくて……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.