女性記者の過労死問題で、なぜNHKはウソをついたのか:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
NHKの女性記者が「過労死」していたことが分かった。2013年7月にこの女性は亡くなったわけだが、なぜNHKはこの大きな問題を伏せていたのか。
これまでの考え方を捨てるしか道はない
7月の記事でも紹介したが、宅配クライシスが問題になった後、ヤマト運輸は佐川急便、日本郵便と首都圏の高層ビルなどで荷物を1社に集約して配る連携策を強化する方針を明らかにしている。いずれは、高層マンションや一戸建てに広げていくという。
同じ空間を、さまざまな宅配便のドライバーたちが台車を押してかけ回っているのは、「昭和の宅配便」からすれば健全な競争だが、人口が減ってネット通販がこれだけ普及した時代になると、利用者にとってもドライバーにとっても効率の悪いこと極まりない。宅配ドライバーのみなさんが大切な社会インフラだとすれば、その限りある資源をみんなで守りつつ、業界として取扱量を増やしていくとなると、おのずとこういう考え方になっていく。
マスコミクライシスも同じように、これまでの考え方を捨てるしか道はない。
情報を独占したいから記者クラブをつくったわけだが、いまとなっては記者を縛る重い足かせにしかなっていない。だからまずは、ここをオープンにする。誰でも入れるようになれば、NHKでも朝日新聞でもわざわざ人を置いておく必要がなくなる。記事を書く際に必要なオフィシャル情報は共同や時事といった通信社に頼ればいい。どうしても置きたければ、記者を目指す学生バイトでもいい。
そうなれば、記者の負担は減る。夜討ち朝駆けをしたいのなら徹底的にやればいい。記者会見でパチパチとPCを叩く雑務から解放されれば、「スクープを引っ張ってくる異能の記者」も生まれやすい。つまり、記者クラブをなくすことで、記者という重要な社会インフラが維持できるうえ、マスコミの調査報道が充実するので、まわりまわって国民にもメリットがあるのだ。
もちろん、権力側は困る。これまで顔なじみで気の利いた質問をしてくれたのに、東京新聞の女性記者みたいな方たちもわんさかと訪れるからだ。
いずれにせよ、マスコミの「働き方」ではなく、「考え方」を変えないことには、佐戸さんのような犠牲者は後を絶たない。むしろ、記者の仕事は加速度的に増えてきているので、より事態は悪化していくだろう。
だが、こういう危機感をもっていないのが、ほかでもないマスコミの幹部たちだ。イノベーションのない「ムラ」で30年、40年も生きてくると、外部の話に耳を傾けることができない。そのくせに「正義」だけは口を開くたびに語ってきたので、客観性のかけらもない独善の塊になってしまう。
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