成功事例や武勇伝はまず、疑え:常見陽平のサラリーマン研究所(2/3 ページ)
「○○社はスゴい」「○○さんの武勇伝にびっくり」みたいな話は、ちょっと引いた視点で考えたい。本当にそれはスゴいのか、と。ビジネス界における武勇伝や成功事例は、疑って掛かる必要があるのだ。
武勇伝や成功事例を鵜呑(うの)みにするな
データ誇張系
営業の場面でありがちなのが、その商品・サービスに関する満足度調査、ユーザー調査などのデータが誇張されているパターンである。「ユーザーの93.5%が満足!」みたいなデータがパンフレットや企画書に盛り込まれており、「あなたもどうですか」などと営業が言ってきたりする。
ただ、この手のデータには気を付けなくてはならない。満足度調査の多くは、営業ツール用に作ったデータだからだ。営業にドライブをかけるために、自社に有利になるようなアンケートを仕込んでいる。
例えば、誘導尋問的な質問を設置したり、選んでほしい欲しい答えを一番左に置いたりする(選ばれやすいように)。
個人的に衝撃を受けた体験を共有しよう。私が人事部にいた時代、内定者に関して調査を行うべく、データ集計などを受託している企業数社に声をかけ、見積もりをとったことがある。そのうちの一社がまさに、営業用の誇張データをつくっている企業だったのだ。知らずに声をかけてしまったのだが。「どんなデータを“つくり”たいんですか?」と聞かれ、引いてしまった。ないわ。
因果関係怪しい系
何かの商品・サービスの効果にしろ、人事制度にしろ、成果や成功要因が怪しいものが散見される。私がずっと批判している「働き方改革」の成功事例などはまさにそうだ。
いつも「怪しいなあ」と思っているのは「働き方改革で業績アップ」という事例だ。いや、働き方改革の成果で労働時間が削減できたなどの例はまだ分かりやすい。ただ、「業績アップ」となると、「ちょっと待ってくれ」と言いたくなる。
業績は市場の変化も関係するので、働き方改革との因果関係を特定するのは難易度が高いはずなのだ。労働時間を減らし、業務の効率化を図って業績が上ったとアピールしたいのだろうが、実際は業界全体が伸びていたり、競合企業数社の新商品リリースが遅れたりなどの要因で、自社の努力に関わらず業績は上がってしまうことがある。
このような成果、因果関係怪しい系には気を付けなくてはならない。怪しいダイエット商品の売り文句と言っていることはあまり変わらないのだ。
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