成功事例や武勇伝はまず、疑え:常見陽平のサラリーマン研究所(3/3 ページ)
「○○社はスゴい」「○○さんの武勇伝にびっくり」みたいな話は、ちょっと引いた視点で考えたい。本当にそれはスゴいのか、と。ビジネス界における武勇伝や成功事例は、疑って掛かる必要があるのだ。
昔はよかった系
上記の話とも似ているのだが、「昔はここまで頑張って、こんな成果をあげたぞ」という張本勲的武勇伝をビジネスに関連して言う人がいたら、疑ってかかった方が良い。それは、努力が報われる時代だったからではないか、と。
市場自体が伸びていて、各社の商品・サービスにあまり差がない場合、あとは各社、各人の努力がそのまま業績につながる。気合いと根性系の努力がそのまま数字につながったのだ。
昔はこれだけ頑張ったものだと言い出す奴には気を付けろ。それは、努力が報われる時代だったし、業務を効率化するツールがそろっていなかっただけなのだ。
真の功労者、他にいる系
以前もこのコラムで紹介した内容だ。メディア受けを狙って、キャラ立ちしている人をサービスの仕掛け人として紹介するケースがある。気を付けた方がいい。これはアレオレ(アレはオレがやりました)詐欺を会社から強要されているパターンだ。
実際は真の功労者がいたりする。この手の人は、さまざまな企業から声が掛かったりするが、実際の力が怪しくてみんなが引いてしまったりする。次第に仕事が来なくなったりする。
このような影武者いる系には気を付けるべきだ。というわけで、どんな仕事にも真の実力者がいたりするものだ。
それは本当にいい話なのか系
例えば、営業締め日に大型受注を決めて予算を達成したみたいなケースがそうだ。営業に関する根性が評価されたりもするが、冷静に考えると「締め日までに、ちゃんと計画的に受注しろよ」という話になったりする。計画性がないんじゃないか、と。
あと、個人的にはNHKのドキュメンタリー番組『プロジェクトX』などは、「本当にいい話なのか?」と思ってしまうことがある。それって、従業員に過重労働を強いただけではないのか、と。
あんなにドラマのあるプロジェクトは、進捗が順調とは言えない。プロジェクト×(バツ)なのではないかと思ったりもするものだ。本当に良い話なのか、と疑う視点を持とう。なんだこりゃと思うことだってあるはずだ。
まだまだあるが、この辺で。こういう引いた視点を持つと「俺はまだまだダメだ」「うちの会社はダメだ」みたいに卑屈にならなくて済む。まず、目の前の仕事をやろう。焦っちゃいけない。
常見陽平のプロフィール:
1974年生まれ。身長175センチ、体重85キロ。札幌市出身。一橋大学商学部卒。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。長時間の残業、休日出勤、接待、宴会芸、異動、出向、転勤、過労・メンヘルなど真性「社畜」経験の持ち主。「働き方」をテーマに執筆、研究に没頭中。著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』『エヴァンゲリオン化する社会』(ともに日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)『普通に働け』(イースト・プレス)など。
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