なぜ「トクホ」はシニアよりも若者に人気なのか:スピン経済の歩き方(3/4 ページ)
働く人たちの間で「朝トクホ」なるものが定着してきている。体脂肪に頭を悩ますおじさん世代がこぞって買い求めているイメージを抱くかもしれないが、意外にもこの動きを後押ししているのは、「20〜30代」だという。
「夜型社会」の崩壊
ただ、その一方で今のように「朝型社会」への急激な移行は「過渡期」ならではという、さまざまな問題も引き起こすのではないかという懸念もある。その代表的なものが、「夜型社会」の崩壊である。
実は先ほどのNHK放送文化研究所の調査によると、働く人のなかで、「仕事のつきあい」をしている人の率が、1995年の10%から比較して6%に減少。中でも、販売職・サービス職、事務職・技術職、経営者・管理職などは半分の水準になっている。
要するに、この20年でビジネスパーソンの「飲みニケーション」がガクンと減少している。
日本フードサービス協会が毎年、協会会員社による外食産業市場動向調査を公表しているのが、それによると「ファストフード」「ファミリーレストラン」などが好調に推移していることと対照的に、「パブレストラン・居酒屋」がこの数年は前年比マイナスが続いている。
そのスタートを振り返っていくと、売り上げ金額前年比は2009年、利用客数前年比が2008年。ちなみに、このタイミングというのは、先の「健康と飲料レポート2017」の中にあるトクホ飲料市場(富士経済「H・Bフーズマーケティング便覧」から抜粋)によると、600億円を突破したタイミングである。トクホ飲料という健康課題を解決しようという商品の普及と、「外飲み」の減少というものは表裏一体というか、微妙にリンクしている可能性があるのだ。
といっても、これは冷静に考えてみれば、当然の話である。ビジネスをしている側の立場からすれば、トクホ市場も右肩あがりで、外食産業も右肩あがりという都合のいいことを考えるが、銭金の問題ではなく、実際に消費をするのは、血の通った「人間」だということを忘れてはいけない。
早起きをして朝活だなんだとやれば当然、夜は眠くなる。体脂肪や血圧を気にしてトクホを飲むようになれば当然、「今夜はオールだぜ!」なんて若い時のようにハッスルすることも控えるようになる。
女性の社会進出が進む一方で、「男性不況」(マン・リセッション)が起きているという現実問題があることからも分かるように、人口という総数が増えない以上は、どこが出ると、どこかが引っ込むのは当然だ。
関連記事
- 「ウィルキンソン」がバカ売れしている本当の理由
「ウィルキンソン」が売れている。躍進のきっかけはハイボールブーム。割り材としての需要が増えたことでブランド認知が上がったそうだが、大事な要素が欠けているのではないだろうか。どういうことかというと……。 - 日本に「ハロウィン」を定着させた「仕掛け人」は誰か
今年も大盛況の中で「ハロウィン」が幕を閉じた。オジさんたちから「我々が若かったころは、こんなイベントなかったよなあ」といった声が聞こえてきそうだが、実は40年ほど前から行われていたのだ。仕掛け人は広告代理店でなく……。 - マスコミが立憲民主党を「躍進」と報じる病
「立憲民主党、躍進」という報道を受けて、モヤモヤしている人も多いのでは。民進党の「チームリベラル」という方々が当選しただけなのに、なぜ「躍進」という言葉が使われるのか。その理由は、マスコミに問題があって……。 - なぜ日本のおじさんは怒ると「責任者を呼べ!」と騒ぐのか
街中を歩いていて、おじさんが「責任者を出せ!」と騒いでいるのを聞いたことはないだろうか。例えば、駅員に大声を出したり、コンビニの店員を叱ったり、とにかく日本のおじさんはよく怒っている。なぜおじさんは「責任者を呼べ!」と叫ぶのか、その背景を調べてみると……。 - 「最近の政治家は“質”が落ちている」というのは大ウソだ
政治家の不祥事が続いている。パワハラ議員がいたり、サッカーファンをののしる議員がいたり。このほかにもダメ政治家が世間をにぎわせているが、最近の政治家は本当に質が落ちているのか。いや、そうではなくて……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.