就活生を悩ませる、おじさんたちの「個性」「人間力」という言葉:常見陽平のサラリーマン研究所(3/3 ページ)
就活の時期になると必ず現れるのが、意識高く就活生にエールを送る「若者応援おじさん」や、就活や新卒一括採用を批判する「若者の味方おじさん」だ。前者はまだかわいらしい。ただ、後者は罪である。若者を何も救わないからだ。
「若者の味方おじさん」の叫びでは若者は救われない
もちろん、新卒一括採用に問題がないわけではない。むしろ、大きな問題を抱えている。しかし、未完成の若者の可能性にかけるという意味では新卒一括採用のポリシーは評価するべきである。
課題は、就職活動ではなく就社活動になっているという点だ。いくら業界・企業・職種研究をしたところで、配属先が大きくずれてしまうケースもあるし、その後も良くも悪くも業務内容は変化していく。
そもそも「個性」や「人間力」が重要だと勘違いしている点が日本の労働市場の問題だとも言える。このようなものを求めるのは酷である。だから就活はつらくなる。「労働力」「スキル」こそ問うべきなのだが、これは学校教育との共犯関係で、一部の学部を除いては社会にすぐ役立つスキルは身につかない。
というわけで、「就活は没個性だ、学業阻害だ」と叫んでいても、若者は救われない。逆にブーメランも飛んでくる。このような議論を10年前もしていたような気がするのだが、この先10年はどうなるだろうか。
常見陽平のプロフィール:
1974年生まれ。身長175センチ、体重85キロ。札幌市出身。一橋大学商学部卒。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。長時間の残業、休日出勤、接待、宴会芸、異動、出向、転勤、過労・メンヘルなど真性「社畜」経験の持ち主。「働き方」をテーマに執筆、研究に没頭中。著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』『エヴァンゲリオン化する社会』(ともに日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)『普通に働け』(イースト・プレス)など。
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