年末年始の営業は必要か 休業日設定の動き広がる:慣習は変わるか
年末年始に休業日を設ける動きが、飲食や小売りなどの現場で広がってきた。元日から当たり前のように店が開いている、という暮らしを見直すきっかけになるかもしれない。
もうすぐお正月。年末年始に休める人もいれば、仕事で忙しい人もいる。それが日本の当たり前の光景になってから久しい。
記者の父も「忙しい人」の1人だ。家電量販店に30年以上勤めているが、記者が幼いころ、正月三が日は休みだった。それが元日だけになり、今では元日はいつもより早く出勤する。
そんな光景が少しずつ変わるかもしれない。飲食や小売りなどの現場で、年末年始に休業を設ける動きが広がってきた。
初の一斉休業
居酒屋「旬鮮酒場天狗」「炭火串焼テング酒場」を展開するテンアライドは、12月31日の大みそかに一斉休業すると発表した。これまで店舗ごとに休業日を設けることはあったが、全122店舗が一斉に休業するのは初めて。
テンアライドは飲食業界の中でも、従業員満足度向上の取り組みに力を入れる企業として知られる。居酒屋ながら原則午後11時半閉店で、深夜営業はない。休暇制度も充実しており、これまで「一斉に休む」必要性を議論してこなかった。
それでも一斉休業を決めたのは、「従業員には家族がいる人も、地元が遠い人もいる。年末年始ぐらいはゆっくり家族と過ごす時間が必要ではないか」(担当者)という議論になったからだという。また、年末年始のような時期に、社内で働いている人も休んでいる人もいると、不公平感も生じる。
今回は試行として、12月31日の1日のみ実施。2018年以降も大みそかの休業は続ける意向だが、状況を見ながら元日など他の日の休業も検討する。
同社にとっては以前から重視してきた取り組みの一環のようだが、世間的にも働き方改革が注目されるようになってきた。「働きやすい職場づくりは業績にもつながってくる。しっかりと整備しないといけない」(同)
住宅業界にも波及
飲食業界ではロイヤルホールディングスが元日を含む休業日を設けることが話題になっている。傘下のファミリーレストラン「ロイヤルホスト」では24時間営業を廃止した。小売り業界では、三越伊勢丹ホールディングスの多くの店舗で、従来初売りを実施していた1月2日を休業日にしている。18年からは三が日を休業することを検討していたが、断念したと報じられた。
その流れは他の業界にも波及している。大和ハウス工業は18年から、1月1〜3日の三が日に、全国の住宅展示場などの営業を取りやめると発表した。これまでも元日は休業日だったが、2日と3日は営業していた。全国240カ所の展示場と99カ所の営業所が対象となる。
住宅業界でも年始の時期は書き入れ時。それでも三が日休業を決めたのは「お客さまと身近に接している社員が自ら家族と過ごすことで、モチベーション向上を図る」(担当者)ことが目的だ。
先行して14年から三が日休業を実施している東京本店で業績への影響がほとんどなかったことから、全国展開に踏み切った。
ゆっくりと休むことが仕事への活力とモチベーションを養う。多くの人にとってそれは同じだ。初売りや福袋など、お正月の買い物やイベントを楽しむのもいいが、家でのんびりと過ごす時間を見直してみるのも必要かもしれない。
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