地方自治体が“副業限定”で人材募集 その狙いとは:395人が応募
広島県福山市は、同市の戦略顧問を「兼業・副業限定」で募集。想定以上の反響があり、395人から応募があったという。
兼業・副業を推進する動きは、企業だけでなく自治体にも広がっている。
広島県福山市は11月15日〜12月12日に、戦略顧問を「兼業・副業限定」で募集した。戦略顧問は、福山市のブレーンとして、市が抱える人口減少などの課題分析と、それを解決する事業の立案を担う。兼業・副業限定での公募は「地方自治体としては日本初」(福山市)という。勤務は週1回で、報酬は日給2万5000円。交通費や宿泊費は別途支給される。
募集開始後、想定以上の反響があり、395人から応募があったという。2月中旬頃に採用者を決める予定だ。
県外から戦略顧問を募集した背景について福山市は「人口減少などにより、自治体を取り巻く環境は厳しさを増している。行政の既存の考え方にとらわれず、各部門の事業を横断しながら戦略的に事業企画を立案し、スピード感を持って成果にコミットする民間の“プロ人材”が必要だった」と説明している。
では、なぜ副業限定での公募を実施したのか。
「移住して転職となるとハードルが高くなるので、首都圏などにいる優秀な人材を職員として獲得することは難しかった。一方で、地方に貢献したいという人は多い。企業に所属しながら携わる副業という形なら人材を集められると考え、戦略顧問というポジションをを設けた」(福山市)という。
人材サービスのビズリーチの調査によると、ビジネスパーソンの75%が「首都圏以外の地域での兼業・副業に興味がある」と答えており、そのうちの44%が「場所は問わない」としている。まだまだ副業を認めている職場は少ないが、今後、人材確保のために副業前提のポジションを用意する地方自治体が増えていくかもしれない。
同市の枝広直幹市長は「市役所内の人・経験だけの“自前主義”による既存の行政運営から脱却する必要がある。民間企業での知見や経験をもとに新しいアイデアを生み出し、市職員の意識改革にも取り組んでほしい」とコメントしている。
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