朝読需要で20万部突破。児童書「5分シリーズ」誕生秘話:カギになるのは「朝読」「郊外」(2/3 ページ)
河出書房新社×エブリスタの児童書「5分シリーズ」がシリーズ累計20万部のヒット。カギになったのは「朝読需要」と「郊外の少年少女」? 河出書房新社とエブリスタに聞いた。
松田: 最初に部数を聞いたときは「本当に大丈夫ですか?」と青くなりました。
鎌塚: 発売した次の週の土日でばーっと売れて、心からほっとしましたね(笑)。そして迎えたGW(ゴールデンウイーク)で大爆発。6月には重版がかかりました。「休みの日に売れる」「ゆっくり安定して売れる」が児童書の売れ方の特徴で、僕たちもそれを踏まえて販売計画を立てていたのですが、予想を上回る動きでした。週末が来ると、売り上げランキングが跳ね上がるんです。発売から7カ月が経ちますが、まだまだ勢いが落ちずに売れ続けています。7月に第2弾、10月に第3弾を出して現在7冊のラインアップがありますが、新刊を出すと既刊も一緒に動きますね。
――第1弾は「涙のラスト」「戦慄のラスト」「驚愕のどんでん返し」、第2弾は「感動のラスト」「心にしみるストーリー」「後味の悪いラスト」、第3弾は「禁断のラスト」。人気があるのはどのタイトルですか?
松田: 「涙のラスト」は人気ですね。ちょっと毒気のある「戦慄のラスト」「後味の悪いラスト」も強い支持があって、SNSで感想をよく見かけます。
鎌塚: 当初から「1年を通して売っていこう」と考えていました。4月、1学期を迎えて朝読の本を探しているタイミングで第1弾を発売。GWが来て、夏休みの直前に「読書感想文」需要でまた波が生まれることを予想し、第2弾を展開。さらに「読書の秋」である10月に第3弾を発売する――そんなストーリーを描いていたのですが、想定以上に「シリーズ買い」が多いですね。それから児童書の特性として、「1年たったらまた下級生が入ってきて読み始める」というものがありますから、まだまだ伸びると期待しています。
10代向けのヒットのカギは「郊外のショッピングモール」
――やはり学校現場や図書館などでの購入が多いのでしょうか?
鎌塚: 学校図書館での購入が多いのは確かです。貸し出しの回転も速いと好評で、しっかり読んでもらえているようです。それぞれのクラス(教室)に置く「学級文庫」としても需要が大きかったので、シリーズをセットにしてケースに入れた「朝読セット」も作りました。この朝読セットも非常に好評で、1つの学校で複数個の注文を受けることも多いです。
朝読需要も織り込んで企画しましたので、学校での購入も予想していたのですが……もともと購買の軸と考えていた書店での売れ行きが予想を上回るものでした。
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