日本のキャッシュレス化を考える:進展はいかに?(3/3 ページ)
17年5月に日本政府は「キャッシュレス決済比率」を民間消費支出に占めるクレジットカード、デビットカード、電子マネーによる決済の割合と定義。今後10年間にキャッシュレス決済比率を4割程度とすることを目指すという。日本のキャッシュレス化の進展状況と今後の課題について整理したい。
キャッシュレス決済比率の目標設定における留意点
日本では「キャッシュレス決済比率」を民間消費支出におけるカード決済と電子マネーの決済の割合と定義されたことについて言及したが、カード決済や電子マネー以外の決済手段が含まれていない点については注意した方がよいのかもしれない。振込や口座振替による利便性が向上することで、キャッシュレス化が進む可能性もあり得る。
例えば、モバイル端末を使用した個人間(P2P)の電子決済に関するサービスが新興国を中心に普及しているが、日本国内においても当該サービスを提供している企業がある(※4)。
また、16年の資金決済法の改正では、仮想通貨に関する法律が整備されたが、仮想通貨の技術を用いた決済サービスについても今後発展していく可能性が考えられる。しかし、このような決済手段は日本政府により定義された「キャッシュレス決済比率」には含まれない。
モバイル端末を用いた決済サービスについては、カード決済や電子マネーの機能を端末に搭載するような決済サービスが消費者に普及することで「キャッシュレス決済比率」が上昇していくようなシナリオも考えられるが、先に例示した「キャッシュレス決済比率」の定義に含まれないような決済手段が普及した場合は、今後「キャッシュレス決済比率」の定義の中に含むべきか議論されることになると思われる。
※4 銀行以外の業者がP2Pの電子決済サービスを提供する場合、日本では資金決済法における資金移動業に相当すると考えられる。銀行等以外の業者であっても、100万円に相当する額以下の為替取引であれば業として営むことができる。このとき、10万円以上の送金・受け取りを行う場合や、送金を継続的または反復して行う場合は本人確認を要する。
関連記事
- 加速するフィンテック なぜ銀行の既存ビジネスを破壊するのか
金融(ファイナンス)と技術(テクノロジー)を組み合わせたフィンテック。日本はこの分野では既に周回遅れになっているとも言われるが、徐々に環境は整備されつつある。フィンテックの現状について整理し、今後の展望について考えてみたい。 - デビットカードの需要広がる ジャパンネット銀行の戦略
ジャパンネット銀行はデビットカードの利用拡大に取り組んでいる。発行枚数は累計140万枚を突破。デビットカードの普及状況やジャパンネット銀行の取り組みについて、担当者に聞いた。 - フィンテックの本命「ブロックチェーン」は伸び悩む?
IDC Japanが国内の金融IT市場予測を発表。フィンテック市場は現在は小規模だが、融資や保険の分野で発展を遂げる一方、ブロックチェーンはやや伸び悩むと予測する。 - 仮想通貨で資金調達 投資家をどう守る?
国内外で盛り上がりを見せるICOだが、一方で投資側にはリスクもある。中国や韓国はICOの利用を禁止することを発表したが、日本は規制については“様子見”の状況だ。 - 財務知識だけではない、優秀なCFOの“条件”
財務面から企業の成長をサポートするCFO――。企業から必要とされるCFOになるためには、どのようなスキルが求められているのだろうか。優秀なCFOの条件について読み解く。
関連リンク
Copyright © NLI Research Institute. All rights reserved.