加速するフィンテック なぜ銀行の既存ビジネスを破壊するのか:加谷珪一の“いま”が分かるビジネス塾(1/4 ページ)
金融(ファイナンス)と技術(テクノロジー)を組み合わせたフィンテック。日本はこの分野では既に周回遅れになっているとも言われるが、徐々に環境は整備されつつある。フィンテックの現状について整理し、今後の展望について考えてみたい。
フィンテックとは、金融(ファイナンス)と技術(テクノロジー)を組み合わせた造語で、主にITを駆使した新しい金融サービスという意味で使われている。日本はこの分野では既に周回遅れになっているとも言われるが、徐々に環境は整備されつつあり、企業の取り組みも加速してきている。
例えば、みずほ銀行とソフトバンクは9月、フィンテックを活用した新しい融資サービスの提供を目的に合弁会社を設立すると発表した。新サービスでは、みずほ銀行のローン審査のノウハウとAIによるデータ分析を融合させることで、スマホだけで融資の申し込みから審査までを30分で完結させるなど、従来型の融資よりも柔軟に対応できるようになるという。2017年前半の事業開始を目指すとしている。
今回の発表はみずほ銀行とソフトバンクの大企業による取り組みだが、諸外国ではITをベースにしたシリコンバレー型ベンチャーが先行してフィンテックを開拓してきた経緯がある。国内でもこうしたベンチャー企業を支援し、新しい知恵を積極的に活用しようという動きが徐々に広がっている。
三菱東京UFJ銀行がフィンテックに特化したビジネス・コンテスト「Fintech Challenge」を2015年から開催しているほか、金融系に強いシステム・インテグレーターの電通国際情報サービスも同様のコンテストを行っている。政府もようやく本腰を入れ始めており、金融庁が今年9月に開催したフィンテック・サミットでは、スタートアップ企業のプレゼンテーション・コンテストが行われた。国内でもフィンテック系のベンチャー企業の活動が活発になれば、業界全体の活性化につながるはずだ。
フィンテックのビジネスは5つのカテゴリーに分類できる
ひとくちにフィンテックといっても、その範囲は広い。これまで登場してきたフィンテック関連の事業やサービスを整理すると、「決済サービス系」「融資・資金調達系」「資産管理運用系」「送金サービス系」「仮想通貨系」の5種類に分類することができる。
決済サービス系のフィンテックは、あまり意識されていないが、既に社会に普及している。代表的なサービスとしてはPayPalやApple Pay、LINE Payといったサービスがある。決済についてはクレジットカードやデビットカードなど、十分なインフラが整っており、新しいサービスはこうしたインフラの上に成立している。決済系のフィンテックは既存の金融インフラとの連動性が高いので、この分野から、次々と新サービスが登場してくる可能性は低いだろう。
一方で、ビットコインなど仮想通貨と組み合わせた形のサービスは今後も多くのサービスが登場する余地がある。電通国際情報システムが主宰したコンテストでオーディエンス賞などを受賞した米Shift Payments社は、VISAデビットカードを銀行口座からもビットコインからも使えるアプリを提供している。決済サービスと仮想通貨は相互に融合しながら発展していくことになるだろう。
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