モスとマックの業績が急回復 それでも安心できない両社共通の悩みとは?:加谷珪一の“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
このところ、モスフードサービスとマクドナルドの業績が急拡大している。その理由とは? この流れは今後も続くの? 経済評論家、加谷珪一が解説する。
モスバーガーを展開するモスフードサービスの2016年3月期における決算は大幅な増収増益となった。売上高は前期比7.2%増の711億円、当期純利益は前期比で何と3.3倍の23億円である。
一方、日本マクドナルドの2015年12月決算は、当期純損失が349億円と上場以来、最大の赤字額となった。マクドナルドは2014年以降、鶏肉の期限切れ問題や異物混入問題などの不祥事によって顧客離れが加速。2年間で200以上の店舗を閉鎖したが、その影響がまだ続いている。
マクドナルドの経営がガタついたことで何かと比較対象とされたモスバーガーだが、両社の経営規模は全く異なっている。マックの全店売上高は4250億円(2016年12月:会社予想)と巨大だが、モスバーガーの全店売上高はわずか1000億円とマクドナルドの4分の1しかない。両社は客単価を公表していないが、モスバーガーはマクドナルドの2倍の客単価があるといわれており、客数を考慮に入れれば、マクドナルドはモスバーガーの8倍の顧客を相手にしていることになる。
同じハンバーガーという商品を扱っていても、マクドナルドはマス市場を、モスバーガーはニッチ市場を主戦場にしている。両社の顧客層は完全に分かれており、マクドナルドの顧客がモスバーガーに流れたわけではない。モスの業績が好調なのは2015年度から積極的に行ってきた値上げが功を奏しているからである。
値上げのカギとなったのは、1〜2カ月ごとに入れ替わる期間限定商品である。定番商品にプレミアムを付けたものや、ご当地メニュー、年末年始など特別な日に対応したメニューなどをきめ細かく提供することで、客単価の向上を図ってきた。
例えば、2015年10〜12月にかけて実施したご当地メニューでは「中津からあげバーガーレモン添え」と「釧路ザンタレバーガー甘酢たれ」の2商品を期間限定商品として販売した。地元の名物にちなんだメニューをスタッフから募集し、リクエストが多かったものを商品化したそうである。
それぞれのバーガーは380円(税込)と同社のメニューとしては特別高いものではないが、顧客の中には2つを食べ比べる人もおり、こうした施策は低価格帯の商品の単価向上に寄与することになる。
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