モスとマックの業績が急回復 それでも安心できない両社共通の悩みとは?:加谷珪一の“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
このところ、モスフードサービスとマクドナルドの業績が急拡大している。その理由とは? この流れは今後も続くの? 経済評論家、加谷珪一が解説する。
マックも客単価値上げで好調に
また、同社は2015年11月から、高級路線を徹底した新型店舗「モスクラシック」を東京・千駄ヶ谷にオープンさせた。ディナータイムにはアルコールの提供も行い、定番のハンバーガーに加え「野菜のバーニャカウダ」(税込780円)、「生ハムときのこのサラダ」(同880円)といった前菜類や、「キノコのアヒージョCLASSICスタイル」(同780円)など、レストランのアラカルトを意識したメニューも用意した。
アルコールはビール、グラスワインが楽しめるほか、ボトルも用意されており、本格的にワインを飲みたい人もカバーする商品構成になっている。
モスクラシックは、2015年に日本に上陸した米国の高品質バーガー「シェイクシャック」を意識していることは間違いない。シェイクシャックは、本格的な味をウリにしており、米国で人気が急上昇。現在では世界12カ国で94店舗を展開している。
日本では、かつてスターバックス・コーヒーの国内展開を行っていたサザビーリーグが米国本社と独占契約を締結。明治神宮外苑内に1店舗目をオープンさせ、今年4月には恵比寿に2号店を出店している。特に2号店は恵比寿という場所柄、仕事帰りのビジネスパーソンがアルコールと一緒に楽しむことを想定しており、ビールやワインのメニューも増やしている。
アルコールが入ると客単価は確実に向上するので、同じ客数でも売上高を拡大することが可能となる。
一方、マクドナルドも前期の決算こそ大幅な赤字だったが、足元では業績が顕著に改善している。2015年度は、ほぼ毎月、全店売上高が前年同月比でマイナスだったが、今年に入って状況が大きく変化した。4月は15.2%増、5月は17.3%増と売り上げは確実に伸びている。
同社の2016年1〜3月期の決算は1億5000万円の営業黒字であり、約100億円の赤字だった前年同期と比較すると業績は飛躍的に改善している。2016年12月期の通期決算については33億円の営業黒字を見込んでいるが、今の調子が続けば達成はそれほど難しいことではないだろう。
黒字転換には不採算店舗の閉鎖が大きく寄与したが、足元の業績回復を支えているのは、やはり客単価の向上である。同社は従来のビックマックの1.3倍サイズのグランド・ビックマック(同520円)、2.8倍のギガビックマック(同740円)など単価の高い商品を今年の4月から投入している。あまりの人気に一部の店舗では、食材が底を付き、販売が中止されるという事態になった。
今年4月の同社の客単価は前年同月比で13.4%伸びているが、客数の伸びは5.1%にとどまっている。5月も同様で、客単価は13.3%伸びたものの、客数の伸びは7%だった。顧客1人が落とすお金の額が大きくなっていることは間違いない。
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