“残業減ると競争が激しくなる”? 「働き方改革」のオモテとウラ:「仕事が楽になる」とは限らない(3/5 ページ)
2017年は「働き方改革」が大きな注目を集めた。多くの企業がテレワークなどの施策を取り入れ、労働時間の短縮を図った。この流れがさらに加速する18年、ビジネス界はどう変わるのだろうか。
テレワークは「メリットばかりだが、競争も生む」
――2017年に日本企業が取り入れた施策の中で、新田さんが最も効果的だったと考えるものは何でしょうか。
新田氏:間違いなくテレワークですね。場所を問わず働ける点、育児・介護・家事と仕事を両立できる点、災害時のリスクを分散できる点――。メリットを挙げればきりがありません。IT系の大企業では、日本マイクロソフトもいち早くテレワークを取り入れ、女性の離職率が40%低下するなど大きな成果につながっているようです。
――デメリットは。
デメリットはほぼないと考えています。強いて挙げるなら、個人に主体的な業務管理が求められる点、ITツールへの対応が求められる点、セキュリティ管理が煩雑な点などでしょうか。これらが導入の障壁となり、取り入れづらいと感じている企業もあるでしょう。
ただ、これらは「生みの苦しみ」のようなもの。そこさえ乗り越えられれば、働き手と企業双方に必ずメリットがあります。18年以降は、テレワークを導入している企業とそうでない企業で生産性に差が生じるはずです。
今後は企業の競争も加速し、テレワークが定着している企業が優秀な人材から選ばれ、そうでない企業は淘汰(とうた)されていくと予測します。
――上司と離れて仕事をするとなると、部下がサボってしまい、生産性が下がるリスクもあるのではないでしょうか?
新田氏:優秀な部下なら、環境を問わず結果を出すはずです。先ほどの人材競争の話と関連しますが、今後はテレワークに対応できない人も生き残っていけないでしょう。「家では集中できない」「会社でしか真面目に働けない」という人は意識を改めるべきです。
「プレ金」には冷めた見方
――テレワーク以外の施策についても振り返っていきましょう。2月に始まった「プレミアムフライデー」はやはり失敗でしょうか。
新田氏:はい。「プレ金」は冷めた見方がされている印象が強いです。11月で10回目を迎えましたが、もはや全く話題になりませんでした。当初は「消費拡大への期待」「多様な働き方導入のチャンス」などと期待が語られていましたが、実際に導入したのは一部の大企業だけでした。
導入できていない大多数の企業からは「納期間近で多忙な月末金曜に早帰りは非現実的」「一部のホワイトカラーだけのもので、自分たちとは無縁」といった意見が挙がっています。まさに「笛吹けども踊らず」といった状況でしょう。
導入企業からも、「『プレ金』の際に、派遣社員など時給労働者をどう扱うかが定まっていない。彼らは労働時間が減ると収入も減ってしまう一方、正社員だけを早帰りさせるとモチベーションに影響する。細部のフォローが必要だ」といった声が挙がっています。
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