アパレルの常識を変えた熊本発ベンチャー、シタテルの信念:河野社長が目指す高み(2/3 ページ)
デザイナーと縫製工場をつなぎアパレル業界の課題を解決する――そんなサービスを提供するのが熊本発のベンチャー企業、シタテルだ。河野秀和社長が同社のイノベーションについて語った。
非アパレルからの需要
社会的な課題を解決すること、これが河野社長、そしてシタテルの信念である。そのためには「人、仕組み、テクノロジー」が不可欠だと考えている。
「例えば、IoT(モノのインターネット)センサを工場に導入する話はよくありますが、これではまだ部分最適化にすぎません。それをビジネスとして動かす仕組みが必要であり、それらをコントールするのは人です。この3つを高いレベルで融合させることが全体的な課題解決につながります」と河野社長は力を込める。
つまり、シタテルもこの3つが組み合わさっているからこそ、アパレル業界の産業構造を変える動きにつながっているのだという。
また、その変革によって新しいサービスがどんどん生まれている。代表例が「WE ARE」というサービスだ。基本的なビジネスモデルはsitateruと同じだが、発注側がデザイナーではなく、非アパレルの人たちである。
働き方改革の流れもあり、今、社員の一体感を高めようと職場でユニフォームなどを作るといったニーズが生まれている。あるいは、既存のワークウェア(制服)を新しくして、もっと機能性のあるものにしたいというニーズもある。例えば、大手ラーメンチェーン店「一風堂」ではWE AREを活用して店舗スタッフのユニフォームを刷新し、新たに約2000着を導入した。これによって当初想定していたスタッフの一体感の創出に加えて、人材採用にも効果が出たという。
「スタッフもそうですが、店にお客さんとして来た若者も『このかっこいいユニフォーム着られるならここで働きたい』などとSNSで投稿していたのです。これは会社のPRとして大きな効果があったと言えるでしょう」(河野社長)
そのほかにも、WE AREを使って自治体や飲食店、スタートアップ企業、インキュベーションラボなど、さまざまなところでユニフォームが作られている。あるホテルでは作ったアメニティがあまりにも評判が良いので販売するようになったほどだ。
「アパレルのノウハウが詰まったサービスは、(業界の垣根を越えて)いろいろなところに広がっていくのだと実感しています」と河野社長は手応えを感じている。
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