アパレルの常識を変えた熊本発ベンチャー、シタテルの信念:河野社長が目指す高み(3/3 ページ)
デザイナーと縫製工場をつなぎアパレル業界の課題を解決する――そんなサービスを提供するのが熊本発のベンチャー企業、シタテルだ。河野秀和社長が同社のイノベーションについて語った。
成長スピードで負けない
創業から間もなく4年。今後、シタテルはどのように進化していくのだろうか。河野社長は企業規模がもっと大きくなるべきだと考える。なぜなら、世の中で必要とされる会社は必然的に大きくなるはずだからという。「シタテルも大きな組織で産業を変えていくプレイヤーになりたいです」と河野社長は意気込む。
上述した通り、必ずしもアパレルにこだわらない。社会そのものの課題を解決するためには、他産業への参入も可能性としては十分にある。しかし、まだアパレル業界で取り組むべきことは多い。
例えば、他産業のプレイヤーが参入しづらい空気感があるという。このように閉じた考え方だと、イノベーションが起きず、あっという間に淘汰されると河野社長は指摘する。シタテルの経営メンバーにアパレル出身が1人もいないのもその表れである。「産業知識が下手にあると、逆に斬新なアイデアがスタックしてしまうこともあるのです」と河野社長は話す。そのアパレル業界の壁を取り払うのは、シタテルのように業界全体を横串でつなぐ会社だからできることだと考えている。
では、会社を大きくするためには何が必要か。そのためには誰よりも自分が圧倒的なスピードで成長しなければならないと河野社長は断言する。
「経営者としてさまざまな課題や、やらなくてはいけないことが日々たくさんあるわけですが、少なくとも社内で誰よりも成長していなければいけません。外的環境がどうだというのは言い訳で、仮に成長できないのであれば、原因はあくまでも自分にあります。私はこの『原因自分説』を唱えています」
原因を自分に求めることで、自分の弱みやエラーポイントが分かり、そこを修正すれば成長スピードが高まるという考えだ。ただし、先に行きすぎると組織がついて来られないので、定期的に経営のコアメンバーや社員に知見を還元していくことが肝要だそうだ。
「圧倒的なスピードで成長するには、我慢強さや胆力が必要です。この点については経営者はものすごく鍛えられます」と河野社長は笑う。
こうした感覚を養う上で、地方で仕事をすることはメリットがあるという。
現在、河野社長は熊本本社と東京オフィスを行き来している。基本的に場所がどこであっても仕事が継続できる環境は整っており、ビジネス上では問題にならない。特に今では東京をマーケットの中心として捉えない動きができ始めている。
一方、熊本で仕事をするメリットは雑念が少ないことだという。東京ではビジネスのスピードが早いので、目の前のことに対して次々と意思決定するなど、全体を俯瞰してみる時間が少ないが、熊本にいると客観的な視点を持てるため、クリティカルなことは熊本で思考することが多いそうだ。
昨年来、エンジニアなどを積極的に採用することで、東京オフィスは既に手狭になっている。そのため今年はオフィスを移転し、さらに規模を拡大していく計画だ。河野社長の「世の中に必要とされる会社はどんどん大きくなる」という言葉通り、前へ、前へと進んでいく。
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