中国製EVに日本市場は席巻されるのか?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)
「日本車が中国製の電気自動車にやられたりする心配はないの?」。最近何度かそんな質問を受けた。本気でそんな心配している人は本当にいるらしい。
トラックはどうか? トラックに関してEVは相当に苦戦するだろう。ドライバーを交代制にして、できれば24時間運用したい機材だ。運行できない時間が長いなんて悪夢にもほどがある。商用機材としては失格だ。
実はどうしてもトラックをゼロエミッションにしたいのならば、水素燃料電池の方がはるかに向いている。長距離トラックは基本的にターミナルからターミナルへの運用である。そこに水素ステーションがあれば、インフラの効率としても、トラックの効率としても極めて都合が良い。しかもほぼ定期運行で、需要に波がないので、水素の輸送も計画的にできる。電気と違って補給時間も短い。何より運転するのも水素補充するのもプロだから、現在最も危惧される700気圧という高圧気体(過去にも繰り返し書いているが水素が可燃性だからではなく高圧気体だから)の取り扱いにも一定の安全性が保たれるだろう。
トヨタ自動車の説明によれば、ラダーフレーム構造とFRレイアウトを持つ商用車は、EV化や燃料電池(FCV)化、ハイブリッド(HV)化がしやすいのだという。フレーム周りには存分にスペースがあり、バッテリーでも水素タンクでも設置スペースの制約が少ない。ただしバッテリーの場合、重量が制約になってしまってスペースだけ解決しても難しいところがあるようだ。
EV、FCV、HVの汎用システムを作れば、フレーム周りの余裕のある場所にタンクやバッテリーなどのエネルギー蓄積装置を積み、プロペラシャフトやデフのどこかにモーターを搭載すれば済む。しかも同じモーターとインバーターが全部の方式に汎用的に使える。つまり1車種ごとに専用開発する必要がなく、汎用システムを開発してメーカーの壁を超えて共有することすら可能である。こうした面を総合して考えると、トラックに関してはEVよりもFCVの方が将来性がある。というか、現在のバッテリーの性能を前提にすれば、EVはトラックに向かない。
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