カヌー騒動の波紋が、学生にも広がり始めている:赤坂8丁目発 スポーツ246(3/3 ページ)
日本のカヌー界が大きく揺れている。日本選手権に出場した小松正治選手の飲み物に、ライバル関係にあった鈴木康大選手が禁止薬物を混入。大きな波紋を広げているなかで、その影響は中高生にも出始めているという。どういうことかというと……。
スポーツ界の信頼を大きく揺るがす“大事件”
さらに深刻な報告が上がってきている。カヌー騒動の余波によって「妄想性パーソナリティー障害」のような症状がスポーツ部活動に励む一部の中高生の間で見られ始めているというのだ。
他校の選手どころか身内にまで蹴落とされるかもしれないとの恐怖感から「他人がまったく信用できなくなった」「仲が良くても裏切られることだってあるから、親友も信用できない」「一体誰を信用したらいいのか、正直まったくよく分からない」などといった過剰な心配を膨らませることにより、スポーツや部活動に専念できない精神状態となって塞ぎ込んでしまう中高生が出始めているというのである。
こうした情報を聞いても「大げさ過ぎる」と信じられない人も多いかもしれない。しかしながら繰り返すが、これは事実であって氷山の一角。スポーツの部活動に励む中高生たちは大人と違ってまだまだ純真無垢なところがあり、このように自分たちにも置き換えられそうな衝撃の話を見聞きすれば、大きなショックを覚えてしまうのも当然だろう。無論、JOCに報告として上がってきていない事例もまだたくさんあるに違いない。
いずれにせよ、解決策は各スポーツの大会主催者側がレースや試合中、飲み物のボトルなども含めた参加選手の使用器具を一括管理して、第三者に触れられないように徹底するしかない。そして“第2、第3の鈴木選手”を生み出さないために、協会側はスポーツマンとしての心構えを伝え、人間育成にチカラを入れなければいけない。もう二度と不正が行われないような環境づくりが整えられれば、周囲から濡れ衣を着せられるような人もいなくなるだろう。
中高生のスポーツ部活動で起きている異変を察知し、改善させることができなければ、2020年の東京五輪も絵に描いたモチに終わってしまう。カヌー騒動はクリーンなイメージが漂っていた日本スポーツ界の信頼を大きく揺るがす“大事件”なのだ。政府機関であるスポーツ庁も本腰を入れて再発防止に取り組んでほしい。
臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:
国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。
野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2017年第4回まで全大会)やサッカーW杯(1998年フランス、2002年日韓共催、2006年ドイツ、2010年南アフリカ、2016年ブラジル)、五輪(2004年アテネ、2008年北京、2017年リオ)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。
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