テクノロジーで「命」守りたい “医療用ウェアラブル”続々登場:第4回 ウェアラブルEXPO(1/2 ページ)
東京ビッグサイトで開催中の展示会「第4回 ウェアラブルEXPO」では、医師・消防士のサポートや、深刻な容体にある患者の救命が目的のものが多数出展されていた。健康管理や業務サポートが主流だったウェアラブル市場で、「医療用」がトレンドになりつつあるようだ。
ウェアラブル端末はこれまで、ランニング時の心拍数などを取得する「バンド型」、画面上にさまざまな情報を投影し、業務をサポートする「アイウェア型」などが主流だった。近年はこれらに加え、伝導性のある繊維を用いて生体情報を取得し、ユーザーのヘルスケアにつなげる「衣類型」も増えている。
だが、東京ビッグサイトで開催中の展示会「第4回 ウェアラブルEXPO」(1月17〜19日)では、こうした流れに変化がみられ、医師・消防士のサポートや、患者の救命といった「医療」が目的のデバイスが多数出展されていた。
「手術中の医師」をサポート
「ウェアラブルを活用して、手術中の医師をサポートしたい」――こう話すのは、福井県の機械メーカー・シマノの担当者だ。
シマノは「医療用アシストスーツ STRONG HOLD」を出展。背中、両腕、両肘を覆う重さ6キロの着用型デバイスで、足元のフットスイッチを踏むと腕・肘を任意の角度で固定できる点が特徴だ。
「固すぎず緩すぎないフィット感を実現した。スーツのアームが医師の腕を支えるため、医師はリラックスした状態で手術に取り組める」(同)という。
医療現場で外科手術に携わる医師の負担は重く、1回の手術が長時間にわたることや、1日に複数の手術をこなすことが多いという。そのため、疲労で手術中に手元が定まらなくなるなど、医師自身の体調に異変が生じるケースもあるとしている。同スーツはこうした状況を未然に防ぐことが狙いだ。
現在は福井県内の病院で実証実験を行いつつ、今夏の商品化を目指して開発を続けている。想定価格は40〜50万円で、全国で100〜200台の販売を目標に掲げる。「多くの医師に使ってもらえるよう、商品化までにさらなる軽量化を図りたい」という。
消防士の熱中症防ぐ「スマート消防服」
帝人は、名刺ケース大のセンシングデバイスを内蔵した「スマート消防服」を出展。高音化下で消火作業に当たっている消防士の深部体温と位置情報を取得し、遠隔地の管理システムに送信できる点が特徴だ。現在は開発段階で、19年度の商品化を目指す。
管理システムでは、体温の変化を基に熱中症のリスクを算出し、アラートを発信することも可能。耐熱性に優れる反面、内部の熱を放出しにくい消防服を着た消防士が、火災現場で体調が急変することを防ぐ狙いだ。
帝人の担当者は「過酷な状況で人助けをしている消防士の命を助けたい。消防士の世界では、『熱さは我慢するものだ』という根性論が根強いと聞くが、スマート消防服によってこうした働き方を改革したい」(新事業開発室)と話した。
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