ペーパーレスによる業務効率化は「神話」なのか:成功のポイントとは(4/4 ページ)
多くの企業で「ペーパーレス化」や「文書の電子保存」が推進されていますが、課題も多くあります。業務のペーパーレス化を成功させるポイントを解説します。
ペーパーレスを進めるために最も重要なこと
業務におけるペーパーレスを成功させるために一番重要なポイントは、使いやすいツールやペーパーレス化というお題目ではなく、ペーパーレスに大義名分となる「目的」があり、その目的を実際に業務が変わることになる社員に浸透させることです。ペーパーレス化はあくまでも手段であり、具体的な目的がないペーパーレス化施策は、紙という非常に使い勝手のよい素材のメリットを奪うだけで、社員の理解も得られず業務の効率化にもつながりません。
ペーパーレスにすることで、会社としてどのような将来像を目指しているか、どのような課題が解決されるのか、そのメリットは何か、などを社員に丁寧に説明して理解を得る啓蒙活動こそ、ツールを導入することよりも重要な活動となります。そして、この目的は会社、部門、人によって捉え方が異なるため、必ず説明する対象と関連し、理解しやすいメリットと価値を具体的に訴求することが必要です。
このためには、各組織の現状のプロセスや課題に関する事前調査後、目的の具体化や数値化を行うとともに、実施スケジュールに関しては人が変わるための時間を考慮し作成する必要があります。これらを丁寧に各組織・社員に説明することが重要であり、急いで実施すると期待通りの結果を得られない場合があります。変化を嫌う組織もありますし、そもそも紙のアフォーダンスによって「人は紙が好き」なのです。
ペーパーレスは企業の競争力を高める
冒頭で述べた通り、ペーパーレスにより企業はコストを削減するとともに自社の業務をスピードアップさせ、社員の働き方を変えていくことができます。それによって、より生産性の高い業務へ人材をシフトすることができ、また優秀な人材を採用することも可能になります。そして最終的には、企業の競争力の強化につながっていきます。そこまで言うと大げさに聞こえるかもしれませんが、今の業務を変えるためには、ペーパーレスから始まるストーリーを丁寧に描けるかが、実はペーパーレス化を成功させるための最重要ポイントと言えるでしょう。
現在業務のペーパーレス化をお考えの方は、この機会にその目的とゴールについて、いま一度振り返ってみてはいかがでしょうか。
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