ペーパーレスによる業務効率化は「神話」なのか:成功のポイントとは(3/4 ページ)
多くの企業で「ペーパーレス化」や「文書の電子保存」が推進されていますが、課題も多くあります。業務のペーパーレス化を成功させるポイントを解説します。
どのようにペーパーレスにするのか
では、これらの目的を達成するために、どのようにペーパーレス化を進めればよいのでしょうか。
社内文書のペーパーレス化
社内文書は主に社内における情報共有やコミュニケーションのために用いられる文書で、これらには会議資料や稟議(りんぎ)書類、給与明細、領収証、経費精算書類などがあります。会議資料は会議室にモニターやプロジェクターを設置し、その使用を徹底することでペーパーレスを実現できるでしょう。稟議書類も電子稟議システムなどのツールを導入することでペーパーレス化が図れます。給与明細や経費精算書類なども電子的に配布・申請できるツールが増えています。
社外文書のペーパーレス化
社外文書、つまり自社と取引のある他の会社とのやりとりに使用する文書の電子化もさまざまな方法があります。以前から受発注などにはEDIシステムが使われ、近年では電子契約システム、電子請求システムなど、さまざまなソフトウェアが提供されており、これらを使用することで社外文書のペーパーレス化を進めることができるでしょう。
それでもペーパーレスは進まない
上記のように、現在では社内文書、社外文書ともにさまざまなペーパーレス化の手法があり、それらのツールを提供している企業や提供するサービスには膨大な数があります。それにもかかわらず「ウチの会社はまだ紙で業務をしている」と感じている方も多いと思います。
事実、15年以上前にMIT Pressから発表された“The Myth of the Paperless Office(ペーパーレスオフィスの神話)”という心理学の研究論文には、当時まだ普及段階にあったEmailによる業務を導入した結果、平均して40%も紙の消費量が増えたとの結果が報告されています。
この理由として、紙の薄い、軽い、曲げやすい、不透明などの物理的特性は、人がペンで書いたり運んだり持ち込んだりする行動を自然に誘起する「アフォーダンス」があり、デジタル機器やソフトウェアツールなどが紙を置き換えるには、そのような特性を持たなければ、心理的に難しく、逆に効率を下げるとも報告しています。つまり、対応するツールが紙と同等のアフォーダンス、利便性を持たなければ、人は自然と紙を使用してしまうということです。
現在はタブレットやスマートフォンなどのモバイル端末が普及していますが、これらのデバイスは幼児であってもタッチパネルを操作できるような簡易性も持ち合わせています。紙と同等の利便性があるとは言えないまでも、昔の機器やソフトウェアに比べて大きく進歩しています。これらのツールの普及によって、ペーパーレスの敷居は下がっています。
ただし、実際の業務の現場で本当にペーパーレスを推進するためには、これらのツールの採用だけではまだ不十分なのです。
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