海藻の加工・販売で日本一 カネリョウ海藻、成長のワケ:熊本の地で60年(2/4 ページ)
海藻の加工・販売業界で国内トップシェアを誇るカネリョウ海藻。1954年の創業以来、国内外で200もの仕入れ先を開拓し、海藻サラダに使われることもある「色もの」海藻で売り上げトップに、もずく、めかぶも売り上げ1位を記録した(※同社サイトより)。グループ企業と合わせて売上高は170億円。海藻の研究から商品開発、製造、販売までを一貫して手掛け、これほどの規模で事業展開する企業は業界内にほとんどない。成長の理由、今後の展開に迫る。
加工のために機械装置も自社開発
同社が業績を伸ばし続けているのは安定した供給体制を整えていることに加え、品質を保つ商品製造ラインを確立している点にある。
「私たちの商品がおいしくて、安心安全なのは当然のこと。品質管理が99点ではだめなのです。常に100点でなければならない。だからこそ人材育成には力を入れています」と話すのは入社23年目になる中村貴己工場長だ。
部門ごとに作業手順・確認事項にこまやかなチェックポイントを設け、担当者が責任を持って管理。現場では指さし確認をする。当たり前のことを当たり前にやる、この基本の徹底なくして品質管理はありえない。また国際的な衛生管理の手法「HACCP」を導入し、熊本本社工場では食品安全・品質管理の国際認証規格「SQF(Safe Quality Food)」を取得した。
さらに、同社の製造ラインで使用する機械にも工夫がある。加工業者向けの機械装置を使うのではなく、自社でTHCを開発したのだ。海藻に電気を通すことで海藻自体が導体となって発熱し、風味や食感をそこなわずに殺菌できる。「加工業者はほかにもありますが、自社で機械の開発まで手掛けているところはほかにはありません」
海外ニーズに応える商品開発をスタート
販路と設備を拡大し、「海藻のことならカネリョウに聞け」と言われるまでに成長した同社。近年はヨーロッパ、米国、東南アジアと世界26カ国への輸出も開始している。ただ、輸出額は年間約1億円とまだ少ない。年間2万トンもの海藻を仕入れても、国内だけでほとんどを消費してしまうのだ。
本格的に海外展開を進めるにあたり、今の仕入れ量から海外向けの新商品を作らなければならない。「海外には国内と変わらない需要があります。海藻サラダ用の商品のほかにも海外の健康志向を取り入れた海藻麺を開発する予定です。また、イスラム文化圏ではハラルフードとして海藻の認知度が上がっています。国内でハラル認証を取得することもできますが、海外に拠点を置いて認証を得ることで、海外の消費者に安心感を持ってほしいと考えています」と高木氏。
海藻販売額で国内トップクラスの企業が世界のトップシェアを狙うには、今後の開発力がカギを握る。既存商品のリニューアルで品質を改善し、各国の文化に合わせた新商品を作り出す――海藻のパイオニアならではの経験とアイデアで世界に打って出る。
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