乗り合いタクシーとローカル鉄道は共存できるか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/6 ページ)
東京都町田市が乗り合いタクシーの運行実験を始める。乗り合いタクシーとはどのような仕組みだろうか。そして、鉄道やバスとの関係は競合か共存か。
東京都町田市が「乗り合いタクシー」の運行実験を始める。バスの代替交通という趣旨だけど、地方では赤字ローカル線、赤字バス路線に代わる交通手段として活用されている。乗り合いタクシーとはどのような仕組みだろうか。そして、鉄道やバスとの関係は競合か共存か。
交通至便な都市で暮らしていると、乗り合いタクシーという交通手段がピンと来ない。田舎暮らしでも、自分で運転できる人、家族のクルマで移動できる人は、やはりイメージしにくいかもしれない。もっとも、もっぱらクルマを利用する人は、バスの乗り方も知らなかったり、バス停の場所も分からなかったりする。バスの運行会社がきちんと情報を提供しないからだ。乗り合いタクシーは簡単に言うとバスとタクシーの良いところを組み合わせた乗りものだ。しかし、バスが分からなければ乗り合いタクシーも分からない。
そもそもタクシーとは、日本では「個人向けの運転手付き自動車」である。諸外国にはタクシーの運転手さんが勝手に相乗りさせる文化もあるというけれど、国際的にもタクシーは運転手付き自動車、いや、自動車付き運転手をレンタルするのか。どちらにしても、自分、または自分のグループと運転手さんは1対1の付き合いだ。駅前で同じ方向に向かいそうな人に声をかけて、一緒にタクシーに乗る。これも相乗り。
いや、相乗りではなく、乗り合いの話だ。先日、東北のある街でタクシーに乗った。運転手さんは親切に、山の名前、建物の名前、有名人の生家などを教えてくれた。そのうちに、沿道に立てられた青い旗を指さして、「あれが乗り合いタクシーの乗り場の目印なんですよ」と言った。
タクシー? 乗り場? 田舎のタクシーって、呼べば店や家の前まで迎えに来てくれる乗りものだと思っていた。そういえば、乗り合いタクシーという用語は、赤字ローカル線の廃止や代替交通手段の話題でしばしば登場する。いったいどんな仕組みか話を聞いた。
関連記事
- 2018年、鉄道の営業力が試される
「企業として、需要があるところに供給する。そういう当たり前のことを、鉄道事業者はやってこなかったのではないか」。つい先日、ある第三セクター鉄道の社長さんに聞いた言葉だ。小林一三イズムが落ち着き、人口が減少傾向にある中で、鉄道の営業努力が試される。2018年は、そんな時代になると思う。 - インバウンドを盛り上げる「日本海縦断観光ルート」胎動
京都丹後鉄道を擁するWILLERと日本海沿岸の新潟市、敦賀市、舞鶴市、豊岡市は「日本海縦断観光ルート・プロジェクト」を発表した。豊かな観光資産を持つ地域が連携し、従来の拠点往復ではない「回遊の旅」を提案する。成功の条件は「移動手段の楽しさ」だ。交通事業者にとって大きなチャンスである。 - グーグル&Uberつぶしのトヨタ・タクシー
現在開催中の「第45回 東京モーターショー」。その見どころについて業界関係者から何度も聞かれたが、その説明が面倒だった。自動運転車や固体電池のクルマとかなら「ああそうですか」で終わるのだが、今回はタクシーなのだ。 - JR信越線で「15時間立ち往生」は、誰も悪くない
1月11日夜から12日朝までに発生したJR信越線の雪害立ち往生事件について、情報と所感を整理してみた。体調を崩した方は気の毒だったけれども、何よりも死者がなく、最悪の事態に至らなくて良かった。本件は豪雪災害である。人災ではない。今後に生かそう。 - 鉄道路線廃止問題、前向きなバス選択もアリ
赤字ローカル線の廃止論議で聞く言葉に「バスでは地域が衰退する」「バスは不便」「鉄道の幹線に直通できない」などがある。鉄道好きとしては大いに頷きたいところだ。しかし、ふと思った。バスの運行に携わっている人々は、これらの声に心を痛めていないだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.